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[コメント] 灰とダイヤモンド(1958/ポーランド)

娯楽サスペンスとして作られたのかなと思うのだが、ソ連崩壊後のワイダ監督の作品という後付の知識によるものか、加害側にしても被害側にしても、組織や大勢順応に対する、ずい分と冷ややかな視線を感じさせる。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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加害側、被害側、双方の組織、体制には突き放した様な感じがするが、その一方でそれぞれの人物、加害者と被害者の描き方にはどちらにも人間味を感じさせる。若い暗殺者の方には行きずりの美女までからむというドラマチックさもあるが、殺害への逡巡も人間臭さも感じさせるし、標的となった共産党幹部の男性も幾多の苦難を乗り越えてきた貫禄とともに家族への思いも感じさせる。

いずれもその背景の描き方とはずい分差があるように感じた。特に被害側では戦勝を口実に出世を狙う欲得ずくの宴会騒ぎの印象が強く、とてもじゃないが、同情も誘わないしあまり気の毒な感じもしない。

またときおり現れる街頭のシーンでは早くもそこかしこにスターリンの巨大な肖像画が置かれ始めており、いずれそれが街中に掲げられるときが来る事を予感させる。そのスターリンの肖像画の大半は裏向きだったり横置きだったり布がかけられたりして、まともにスクリーンに映っているのはほとんどなかったように思うが、その辺に1958年というソ連健在なりし時でもワイダ監督の精一杯の反骨の証の様なものも感じた。

サスペンスものとしては古典的演出がけっこうあって、昔の映画の王道ものであるし、ワイダ監督の歴史の一コマでもあり、これらの意味で歴史的な映画だと思った。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)irodori

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