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[コメント] プライベート・ライアン(1998/米)

ベトナム戦争を描いた『プラトーン』と比べて見ると、スピルバーグの人間性に寄せる確かな信頼が感じられた。
シーチキン

冒頭のノルマンディー上陸作戦のシーンは衝撃的で、あれだけでも一つの映画になるんじゃないかとさえ思えた。この部分だけなら、悲惨な光景をたんたんと描き、目を覆うばかりの戦争の惨禍、いや厳密には戦闘の惨禍をストレートに突きつけている。誰かが死ぬ、ということは戦闘においては当たり前のことであって、それが誰であろうとどういう死に様であろうと構っていられない、という本質をわかりやすく示しており、「反戦闘」映画としてなら、その部分だけでも十分じゃないだろうか。

その上で、戦闘の集合体であると同時に、それ以上の何かでもある「戦争」を描くとなると、やっぱりそれがどういうものか、ということが問題にならざるをえない。

アメリカ対ドイツ、という図式による単純化はされているが、ファシズムによる侵略を許さない、ということを大義として掲げていたという第二次世界大戦の一側面は否定できないし、その意味は大きい。そしてその点に着目すると、世界中から侵略戦争だと非難されたベトナム戦争とは、本質的に異なる戦争ではなかったか。

だからこそこの映画には、ところどころにヒトラーへの批判や、ユダヤ人虐殺への静かな怒りが込められているように思え、それがベトナム戦争を批判的に描く映画と異なる点をもたらしているのではないだろうか。

(評価:★5)

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