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[コメント] 許されざる者(1992/米)

黒澤明の時代劇を連想させるような、渋くて重厚という言葉がピッタリの西部劇。全体に、迫力とリアルさ、矛盾に満ちた人間臭さがある。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







印象的なのは、ライフルで腹を撃たれたカウボーイが、最後に水を欲しがるシーン。仲間はせめて末期の水くらい、と思っても狙撃したクリント・イーストウッドがいるから、そのカウボーイに近寄れない。苦しむカウボーイを見かねたイーストウッドは、「撃たないから水を飲ませてやれ」と声をかける。

この葛藤はラストに再び前面に出てくる。イーストウッドモーガン・フリーマンをさらしものにしたジーン・ハックマンを殺して立ち去るとき、「モーガンを埋葬しろ」と叫ぶ。この気持ちはわかる。

続けてイーストウッドは、「娼婦たちを人間並みに扱ってやれ」とも叫ぶ。私はこの時、なんだか偽善的なものを感じた。「じゃあお前は一体どうなのか。保安官を殺す際にそこに居合わせた者を何人も殺しているではないか」と。

この映画を見終わった直後、私はラストの「娼婦云々」というセリフはない方がよかったのでは、と思った。このセリフがなくても、イーストウッドの人間性は十分述べられている、とも思った。

しかし、映画館で観てから10年の月日がたってみると、そこに込められた、ためらいながら、葛藤しながら生きていく一人の人間が、見えてくるような気がした。

(評価:★4)

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