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[コメント] 日本のいちばん長い日(1967/日)

大勢の豪華俳優たちを巧みに使い、2時間半を超える大作でありながら、途中いささかもだれることなく、一つの大きなストーリーを骨太に展開していくという、監督のすばらしいまでの力量に感服はしても感動もなく、心動くこともなく、あくまでも「ただの優れたサスペンスドラマ」としての枠を抜け出ない。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ポツダム宣言受諾=降伏受け入れについて閣議では「国体護持」があいまいとして紛糾したなかで、御前会議において天皇の英断によって降伏を選択、さらに天皇が自分はどうなっても国民のために、と語らせるなど、天皇の戦争責任をあいまいにし、あくまで戦争は軍部の独断とする立場が貫かれている。

8月15日を「日本帝国の葬式だ」と言わせたり、生き残ることの方が勇気がいるという台詞があっても、また14日深夜に特攻に出撃する30名のパイロットなど、いろいろと戦争の悲劇性を描いているが、根本で天皇の英断によって戦争が終結できたとしている以上、天皇への絶対的な忠誠を叩き込んで無謀な戦争に国民を駆り立てたことには目をつむり、天皇の名のによる「軍人勅諭」の実践を目的とした戦陣訓のごく一部(生きて虜囚の辱めを受けず)だけを取り出してみたりしてみても、結局は日本に戦争に駆り立てた最高責任者ということに触れないまま、天皇が国を救ったのだという構図をつくるために、「君側の奸臣を討つべし」という青年将校のクーデターを持ち出さざるを得なくなっている。

そしてそのことによって、戦争責任をすべて内閣や軍上層部になすりつけるような形にしているところに、この映画の最大の矛盾、弱点がある。そういう点では、残念な映画でもある。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)寒山拾得[*] sawa:38[*] tkcrows[*]

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