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[コメント] 終の信託(2012/日)

後半の一対一のやりとりは一種の法廷劇の様でもあり、法律と医療の専門家の対決劇としてみるとけっこう興味深いものがある。この後半の緊迫感を支えるために、前半のいささかだらだらとした展開があるのはわかる。
シーチキン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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娯楽作としてみると、後半に重点をおいた対決劇として楽しむことはできると思う。医者と検事が、それぞれ異なる分野の専門家として互いの土俵の上で主張を戦わせる様は、何だか異種格闘技戦を見るようでもあり、ちょっとした見ものであった。

さらにその結末は、あっけなく権力を持つ側が目的を達して終わらせるというのも、なかなか意味深に思えて興味深い。

ただ、そういう娯楽サスペンスとしてのみの点から本作を見ると平凡な作品と言えるだろう。

しかし本作で描かれているテーマは余りに身近で重い。その上、周防正行監督らしい、細かいところのリアルさが余計にこたえる。

だからこそ敢えて淡白な演出になっているのだろうが、最後の最後に誰かが決断して責任をとる形にならざるを得ないという現実を突きつけられては、観客はうろたえるばかりである。

明日とは言わなくても、数年のうちに誰かがこういう事態、選択、決断に直面することを思い知らされては、いささか尻の座りが悪くなる。

それに本作では患者との付き合いの長い医者が決断し責任をとる形になったが、それはあくまでも時代設定が10年以上前にされているからだろう。昨今の病院では長期入院といっても3ヶ月までで医者と患者に本作のような人間関係が形成できるとはとても思えない。それゆえ、その苦渋の判断はすべて大半が素人の家族なりにかかるのだろうなあと思うと、正直、ぞっとする。

そういう、洒落にならない現実を突きつけるという意味では、前作『それでもボクはやっていない』に続く、鋭い問いかけの映画になっていると思う。

(評価:★3)

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