[コメント] 桐島、部活やめるってよ(2012/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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突飛なタイトルではあるが見終わってみれば、これ以外につけようがないというくらいにはまったタイトルだ。
導入の金曜日の描き方もうまい。時制を繰り返しているようにも見えながら、映画部の二人、桐島の親友とその帰宅部仲間、桐島の彼女とその連れと、その二人と微妙に距離のあるバドミントン部の二人、バレー部のメンバー、吹奏楽部の部長、野球部主将、それぞれの高校生活の断面をしっかり切り取っているから、金曜日の繰り返しが終われば、見るものはごく自然に、彼ら彼女らの高校生活の傍観者になれる。
みんなそれぞれの思いを胸に不器用ながらがんばっている。だけどそのがんばりも、桐島の思い切った行動でいっせいに揺らぎだすような不確かなものだった。でも、だからといってどうしようもない。また同じようにがんばるしかない。
ゾンビ映画の台詞ではないが、「ここが俺たちの世界だから。俺たちは闘っていくしかない」(うろ覚え)のだ。
がんばっても報われない現実を目の当たりにしたからといって、他にどうしようがある。高校生だからこそ、目立つやつの思い切った行動に動揺するし、だからといって他のうまいやり方なんて考えもつかないからがんばるだけだ。
「かっこいい」と言われたスポーツ万能の「できる男」は、夜中に黙々と素振りとランニングをこなす野球部主将を見かけると反射的にこそこそしてしまう。自分がかっこよくないことを思い知らされる。
桐島の彼女はバレー部のメンバーに「バレー部なんて眼中にないんでしょ」と言い放つ。自分がそうかもしれないという不安があるからだ。
そしてその連れのちゃらちゃらした彼女も、実は恋敵に引導を渡すために身体を張るのだ。(終盤、思わず彼女がひっぱたかれるのは観客の溜飲を下げるちょっとしたサービスだろうか)恋に破れた部長はだからといって部活を放り出すこともしない。ただやるのみだ。
不器用で、できない、さえない、つまらない、そんな思いが身体中に詰まっても「どうしようもない」なんて思いもしない。ひたすらもがきあがき続けたい、その一途な思いが、なんとも言いがたい郷愁のような、哀愁のような、ほろ苦いような、甘酸っぱいような、切ないような、人生の彩をもたらしてくれる。見てよかったといえる一本だ。
後、当然ながら、バドミントン部のユニホームにジャージを上着を軽くはおった橋本愛は実にキュートで美しくて、映画館での私服姿や制服姿も良かったのだけれど、いやもう惚れ惚れするような可憐さであった。
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