[コメント] チャーリー・ウィルソンズ・ウォー(2007/米)
一見、「ソ連の魔手」からアフガニスタンを救ったヒーローがチャーリーなら、「アメリカの魔手」からアフガニスタンを守るのがビン・ラディンですか、という皮肉かという気がしないでもない。だがこの映画の土台になっているのは、あくまで「最後のしくじり」であって、それさえ気をつければよい、ということでしかない。
ソ連によるアフガニスタン侵略はなぜ非難されるのか、そして今、アメリカによるイラク戦争とアフガニスタン駐留、その帰結の一つとしての対米テロはなぜ非難されるのか。
この映画の答えは実にシンプルだ。前者は共産主義だからダメ、後者はアメリカが正義と自由と民主主義の理想のためにやってあげたことを現地人にきちんと理解させないからダメ、ということでしかない。
そのあまりに傲慢な思い上がりには、見終わって実に暗澹たる気持ちにさせられた。
ただ、映画としてはやや散漫なところはあるが、それなりに盛り上げる手堅い演出でそこそこの出来にはなっていると思う。
追記
劇中、アフガニスタンで「玩具爆弾」が使用されたことが言われていた。子どもをはじめとした非戦闘員を巻き込むことを前提とした、到底許されることのない兵器である。とりわけ子どもに多数の死傷者が出ることからきわめて非人道的な行為というのはその通りである。
ところで、2008年5月末、クラスター爆弾の全面的な禁止条約が約110カ国が参加した国際会議で採択された。日本の態度が注目されたが最終的には日本も採択に加わった。
このクラスター爆弾は「親爆弾」が爆発して多数の「子爆弾」をばらまき、その「子爆弾」が爆発して非常に広範囲で敵にダメージを与えることを目的としている。ベトナム戦争で米軍によりはじめて本格的に利用され、その後、旧ソ連や中国などにも広がり、最近ではイラク戦争でも利用され、今でも中東などでは使用されている。
クラスター爆弾の最大の問題は、多数の「子爆弾」をばら撒くがその中に少なくない「不発弾」がまじることである。戦闘中にばら撒かれた「不発弾」が回収される事は基本的にない。そして残った「不発弾」が戦闘終了後に戻ってきた非戦闘員(その多くがそこの住民であり、当然、女性や子どもを含む)に、多大な犠牲をもたらすのである。
とりわけ、その犠牲の多くは幼い子どもたちである。
なぜなら「子爆弾」の大きさは、せいぜい牛乳の1リットルパックより少し大きいくらい(小さいものでは野球ボールくらいのもある)で、カラフルな色で塗装されていることから、子どもたちが「おもちゃ」と思って「不発弾」を拾い集めてそれで遊ぶからである。このことからクラスター爆弾は「チャイルド・キラー」と呼ばれることもある。
その非人道さに対し、世界中から非難の声が巻き起こり、ようやくその禁止条約が約110カ国が参加した国際会議で採択された。
そして、クラスター爆弾の主要配備国とされている、アメリカ、ロシア、中国、イスラエルなどは、この国際会議そのものに参加していないし、アメリカ政府はクラスター爆弾禁止条約に反対であると公式に表明している。
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