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[コメント] ギルバート・グレイプ(1993/米)

一番大切な人とふたりで、なんとか精一杯生きていこうと思う時に、心に感じるものが、この映画にはある。生涯、どんなときも、この気持ちを忘れずに生きて行きたいと思う。私にとっては、大切な映画。
Pino☆

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この映画を見たのは、数年前。大好きな10才年下の女の子の薦めからだった。それまで、話題作だったというのは知っていたが、レオナルド・ディカプリオが出てるから、意図して見なかった(その頃はディカプリオ嫌いだったのだ)。そんな理由で、さほど期待もせずに見たのだが、見終わった後は「何でこんな良い映画を見ずに今までいたのだろう?」と、目から鱗が落ちる思いだった。レオナルド・ディカプリオに対する見方も180度変わってしまった(本物の天才だ)。それだけに、最も思い入れが強い映画である。

 さて、この映画の良い点を挙げれば切りが無いが、ひとことで言えば、「最も心に染みた映画」という点に尽きると思う。

 守らなければならない家族(過食症の母親と知的障害を持つ弟、それに家族から除々に距離を置こうとする妹達)を抱え、24年も田舎町から出ずにつまらない日常生活を送ってきたギルバート(ジョニー・デップ)。雁字搦めの人生に、初めて訪れた異性への本物の恋。家族を取るか、恋人を取るか? 家族が自分によせる信頼と愛情を知ってるからこそ、ギルバートの気持ちは揺れ動く。さらに追い打ちをかける悲劇の中で、ギルバートは自分を見失いそうになりながらも、現実から逃げずに必死に生きる。

 ギルバートは決して従来型のヒーローではない。内面的な弱さを持ち、非常に繊細で、家族に優しく、ともすれば自分自身を見失いそうになってしまう。この青年像は、典型的なアメリカ映画のヒーロー像からはかけ離れている。でも、それでいて、弱さを表に出さず、決して家族への愛情を裏切らない(本当に優しい)、どんな逆境にも屈しない。愛情を天秤にかけたり、自分を曲げたりしなかったからこそ、ギルバートには希望の光がさした。そんなギルバートの姿は、どちらかと言えば、日本人的とも言えるのではないだろうか? 共感できた理由の1つかもしれない。

 ストーリーも良かったが、映画としての質も文句の付けようが無い。俳優陣では、主役のジョニー・デップが素晴らしかったことは言うまでもないが、この映画の一番の功労者は、やっぱり、刑事プリ男ことレオナルド・ディカプリオだ。『タイタニック』のようなメガヒット作を幾つ作っても、この映画の演技を超えていないと批判されてしまうのも分かる気がする。ジュリエット・ルイスが演じた、どことなく不思議な風が漂う爽やかな少女も良かった。それと、ラッセ・ハルストレムの手腕も見事だった。映像の美しさは言うまでもないが、特にストーリーの節目で、時折挿入される美しい風景のカットが、何とも言えず良い(少し『バグダッド・カフェ』に似ている)。この芸術的とも言える風景カットと効果的な音楽が、物語の情感を数段高めていた。

 ・・・というように、良い点を挙げればキリが無くなってしまうが、最後に、この映画が最も言いたかったことは、ベッキーの言葉に表れていると思う。

 「自分がどんな状態でも、どう生きるか、何をするかが重要なんだよね。」

 人生というのは、結構残酷なものだ。でも、どんな時も希望を捨ててはいけない。胸に染みる言葉だった。いづれにせよ、これほど心に染みた映画は他に無い。文句無く最高の感動作の1つであり、人生を通して大切にしたい映画である。

(評価:★5)

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