[コメント] 母べえ(2007/日)
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戦時を描いた後、ラストシーンは一気に母べえの死に際に転じる。
戦後の時代、女手一つで娘二人を育て上げるのは想像以上に大変だっただろう。しかしどうにか娘たちは立派に育ち、最期を迎える病室では娘たちとその夫、孫たちが集まっている。孫たちがあんなに泣いているところを見ると、孫にも愛されるいいおばあちゃんだったに違いない。恐らく、母べえの老後はそれなりに幸せだったのだろう。
それでもやはり、戦争で愛する人を何人も失ったことに変わりはなく、彼らと共に生きられたなら、それに勝る幸せはなかったのだろう。何十年経とうとも、「生きている父べえに会いたい」ということに変わりはないのだ。最後のセリフに集約された想いに泣いた。
ナレーションこそ次女照べえが務めるものの、安易に現代パートを挿入したり、現代を導入部分として過去の回想に入るといった手法によって、母べえの老後や、戦後を生きる様をほとんど見せなかった。こうして戦時だけを描くことで、あのラストシーンは一層際立ったものになり、愛する人とともにいられることがどれだけ幸せで、市井の人々でさえ戦争に人生を大きく歪められたのだと考えさせられ、深い余韻が残る。芯が通っていて、良くできた構成だ。
俳優陣に関して。吉永小百合は年齢的にかなり無理があるが、やはり素晴らしい。やはり代わりに母べえをここまで演じられる人を思いつかない。浅野忠信、壇れいもそんな彼女に圧倒されることのない存在感ある演技で、これからも「映画俳優」として頑張ってほしいとおもった。志田未来、佐藤未来の二人も今後の成長に期待が持てる好演。
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