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[コメント] アイズ ワイド シャット(1999/米)

ありきたりなテーマもただでは料理しない。もっと生きて欲しかった。
きわ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







スタンリー・キューブリックを本格的に好きになったのはここ最近なので知ったようなことは言えないけど、これが遺作のつもりはなかったと思う。衰えてもいなければ適当に撮ってるとも思えない。フィルムの隅から隅まで、0.1秒ごとキューブリックの映画。嬉しすぎる。

「倦怠期の夫婦」というありきたりなテーマを、独特のエキセントリックなエロティシズムと緊張感を漂わせて次に何が起こるのかと無闇に期待させる。しかし、シーンごとに交わされる会話に注意してみると、意外になんのことはなく、ただの痴話ゲンカであり、旧友との再会であり、オヤジとの値段交渉であり、娼婦の残念な病状である。よくよく聞けばただ退屈なセリフの単調なシーンの繰り返しなのに、どうしてこんなに惹き付けられるのだろうか。この緊張感はどこからくるのだろうか。なぜこんなに特別に感じるのだろうか。自分にはまだまだ分析しきれない部分はあるけど、計算しつくされた美術、画面を構成する配色、カメラアングル、音響、タイミング、全てが共鳴して作り出されているからであるのは間違いない。この辺りは今さらいうまでもないのだけど、彼の作品を観るたび、いちいち圧倒され感動する。間違いなく心から尊敬し敬愛してやまない監督。これが遺作のつもりは決してなかったはず。きっと「一日が24時間では足りない」というのは彼のような人だろう。私なんかが無駄にしてきた時間を全て捧げて、かわりに彼にもっともっと映画を撮る時間を与えてもらうことができたらいいのに。

「美しい」という形容詞が擬人化したようなニコール・キッドマン。カクテルドレスも眼鏡もエロ綺麗すぎます。『シャイニング』のジャック・ニコルソンシェリー・デュバルしかり、その俳優の一番光るところを確実に魅せて撮るっていう基本的で一番大事なことができるこの監督。これだけ隅々まで自分色をビシビシ張りめぐらせているのに、役者の旨味も絶対殺さない。その一方トム・クルーズは今まで見た中で一番彼自身の存在感が上手に消えてる。それが役者としての本領を打ち出すことに成功している。彼は全編出ずっぱりなのに、そんなこともできるキューブリック監督。ほんとにすごい。(こうなったら生き返るくらい誉め倒してやる)

*** タイトルの解釈もそれぞれ沢山あって面白いですね。私は「開き閉じた目」とそのままですが、「白昼夢」のような意味かなと思いました。

(08/02/21 DVD)

(評価:★4)

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