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[コメント] パッチギ!(2004/日)

知らないからこそ。知ったとしても。
きわ

「パッチギ」という言葉は韓国語で「頭突き」という意味だそうですが、わたしは兵庫県神戸市に在住していた小学校の頃、この言葉を聞いた覚えがあります。それは男子達がケンカなどをする中で発する脅し言葉で、「パチキかますぞ!」という言葉です。当時、わたしはそれが「頭突き」という意味だとはわかっておらず、ましてや韓国(朝鮮)語が元になっているとは知りませんでした。私はそれをこの映画で知った時、なんともいいがたい感動を覚えました。その言葉がどんな歴史を含み、どうやって自分達に浸透していったかなど露知らず、子供らはそれを使っている。「パッチギ(頭突き)」なんていう言葉が広まるということは、この映画での朝鮮人の若者と日本人の若者の間でぶつかりがあったというまぎれもない証で、事実だったんだと。それを知った時、なんだか感動しました。

同じような事で、やはり私が小学生の時、仲良しだった三人組の中の一人に在日韓国人の子がいました。名前を金さんといいました。しかし私は彼女のことをずっと日本人だと思っていました。「金さん」という苗字も、日本の苗字だと思っていたのです。ある日彼女のお家へ遊びに行くと、見慣れない民族衣装を着た彼女の写真がありました。彼女のお兄ちゃんの名前は聞きなれない変わった名前でした。そして彼女のお父さんはとっても体が大きくて、他の男の人とは違う顔立ちをしていることに気が付きました。彼女のお父さんに廊下でばったり出会った時の、言い知れぬ威圧感はいまでも忘れられません。(ただ体が大きかったからそう感じただけかもしれませんが、今になってその時、彼女のお父さんはどんな気持ちで家に上がって来た私をみていたのかな、と思います)それから徐々に彼女が自分とは違うバックグラウンドを持つことを感じていったのですが、私たちの間で何かが変わることはありませんでした。そして学校もバラバラになった後、彼女と自分の「違っていた」部分の話しを母親に聞き、彼女が韓国人だったことを正式に知ったのです。当時、彼女の両親や周りの大人達がいじめの心配をして、できるだけ隠していたそうです。しかしそんな大人たちの心配をよそに、彼女が違うバックグラウンドを持つと知ったあとでも、私達が変わることはなかったのです。

子供はなんのボーダーも持ちません。それは何も知らないからです。苦労した大人達は虐げられた過去を忘れないかもしれませんし、許すことはできないかもしれません。でもその記憶を持たない若い者に、その憎しみを送りバトンするのはどうでしょうか。歴史や事実をなかったことのように目を背ける事も違うけれども、憎しみを経験していない者にそれを植えつけて、新しい世代の仲の色んなチャンスを取り上げてしまうのも、違うと思います。

余談ですが、学生時代を京都で過ごした私にはなつかしい場所がたくさん写っていて嬉しい。しかもド派手な喧嘩が繰り広げられている。「ここ、あの広場やん!あ〜ここのアンティークショップのおばちゃん、めっちゃいけずやったなぁ。ていうか後ろSTEP(靴屋)がめっちゃ写ってるけどええの?」とか。(2006/11 DVD)

(評価:★4)

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