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[コメント] 青い乳房(1958/日)

まずは開巻、邸宅の2つの部屋を使った空間の見せ方に唸る。渡辺美佐子を見る夫の大森義夫。渡辺は後妻で、前妻との間の一人息子が小林旭だ。
ゑぎ

 この後すぐに、渡辺と小林が二人して池袋の西武百貨店へ行くシーンになるのだが、百貨店内で、小林が豹変するのには吃驚させられる。一人になった小林が、池袋駅前で女子高生・稲垣美穂子に声をかける。続くカット繋ぎも、とても不思議な繋ぎだ。小林と稲垣の二人が、東口から西口への高架下トンネル通路を歩く。これを俯瞰でとらえたと思うと、カメラは高架上をパンする。まるでワンカットかのように見せながら、トンネルを抜けた突き当りにいる二人のカットに繋ぐのだ。(後ろの壁に『楡の木陰の欲望』の大きなポスターが見える!)さらに、西口の繁華街を歩く二人のシーンになるが、バーや飲み屋の看板を俯瞰で繋げる、こゝも独特な画面設計なのだ。というように、この出だしの部分が一番目立つのだが、この時点で既に、清順らしい空間造形の萌芽が見える。

 似たような空間の二重構造の見せ方として、後半出て来る二谷英明演じる画家のアトリエがある。訪れた渡辺と、二谷の二人が、1階から中2階へ階段で移動するのをカメラは上昇下降移動で見せるのだ。これも面白い演出だ。というか、現場に負荷をかける、こだわった演出だ。

#備忘でその他の配役等を記す。

・小林が慕うジャックの健と呼ばれる男に小高雄二。その女は高友子。小高のバーで、平岡精二クィンテット登場。平岡のビブラフォン演奏が拝める。小高の子分には野呂圭介柳瀬志郎がいる。野呂が2階の窓から通りを見ながら唄うシーンがある。あと、バーテンダーで上野山功一

・稲垣の家は、椎名町の薬局。母親は初井言栄、薬剤師で初井の愛人が小沢昭一

・渡辺が7年前に襲われた場所は月島一丁目一番地。

・ラスト近くに登場する産婆は高橋とよ

(評価:★4)

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