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[コメント] 恐怖分子(1989/台湾=香港)

圧倒的な力を持った傑作だ。画面の強度が飛び抜けている。例えばモーテルで女が男を刺すシーンの画面外からの唐突な運動の衝撃。同じような演出で言えばオフィスで男が女に詰め寄るシーンもそう。それでいて小道具の使い方の周到さも心憎い。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 例えばプラターズの「煙が目にしみる」をBGMにしたシーンで出てくる第一騎兵師団のマークのついたジッポー。ラスト近くでこの母子家庭の娘がハーフだと説明される伏線になっている。或いはズボンの裾に隠し持つナイフの面白さだとか。

 巻頭、『バージニア・ウルフなんかこわくない』のリズ・テイラーとリチャード・バートンの写真に被せて台詞が入る部分を見た瞬間からこの映画がとんでも無い力に満ちた傑作であることを確信できる。冒頭数分で主要人物を登場させ、ラストへ向かって加速度的に収斂させる構築力も豪腕な中に繊細さを合わせ持っている。ばらばらの生活を営む人物達の出会いはご都合主義的な部分もあるがご都合主義を嫌う多くの映画ファンをも納得させるギリギリの線だろう。このあたりの巧さも舌を巻く。そしてラストの夢落ちのショックと余韻。やはりこの監督の力量は世界的レベルでみても突出している。参りました。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ペペロンチーノ[*]

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