[コメント] モンパルナスの灯(1958/仏)
ベッケル映画の男女の関係は、殴り殴られる関係にある方が良いことをしみじみと感じてしまう。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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冒頭数分でジェラール・フィリップが愛人のリリー・パルマーをぶん殴り気絶させるシーンがあり、「おゝベッケル節が炸裂!」と嬉しくなる。殴られたパルマーが翌日ケロッとしているのが尚良く、ラスト近くで、フィリップと結婚したアヌーク・エーメに対して「殴られてない?」と笑いながら聞くシーンがあるのも更に良い。しかし、ジェラール・フィリップはその妻アヌーク・エーメを殴れるような関係にない。ここで、ベッケル映画の男女の関係は、殴り殴られる関係にある方が良いことをしみじみと感じてしまう。
ってな具合で私は無い物ねだりをしてしまうし、ストーリ的な破綻(というか性急さ)も見て取れるのだが、もとより悪い映画ではないし、傑作と云って良い。アヌーク・エーメの美しさを見ているだけでも時間を忘れさせてくれる。ジェラール・フィリップはどんなに破滅型人間を演じようと常に気品に溢れている。リノ・ヴァンチュラの透徹した非情ぶりにはゾクゾクする。特にヴァンチュラの登場シーンは悉くガラス窓越しで演出されており、窓の演出家ベッケルの奥義を堪能することができる。
また、クリスチャン・マトラのカメラワークは全ての画面において構図が完璧だ。特に、ジェラール・フィリップとエーメが道を分かれて行くカットで二人を捉え続ける画面や、フィリップのアパートの階段を使ったカットの美しい構図は神業と思えるくらい。
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