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[コメント] 朝が来る(2020/日)

逆光を取入れた画面が多い。だが、本作の逆光は、かなり明確に、幸福を象徴している。例えば、最初に強く意識させられるのが、永作博美井浦新が、「ベビーバトン」のセミナーに参加するシーン。
ゑぎ

 それは浅田美代子のプレゼンの途中、スタフがカーテンを開けるカットだ。こゝで、窓からの光が強烈に差し込むのだ。あるいは、セミナー終了後に二人で昂揚して会話するカットもそうだ。あるいは、蒔田彩珠田中偉登の中学生カップルが、森を散策するシーンや、ベッドで体を寄せ合い、愛の言葉を語るシーンもそう。広島の小島の海辺で、蒔田一人が夕陽の中に立つカットは、はたして幸福な逆光と云えるのだろうか、と思ったが、最後まで見ると、やはり、あれだって、幸福の象徴だと私には思えて来る。そして、ラストも夕陽の逆光だ。

 ただし、本作は後半かなり冗長と思う。前半で見せたシーンの繰り返しも多い。もとより、蒔田の回想が入った時点で、彼女の顛末を最初から見せるのか、と少しゲンナリしたのだが、実は、彼女のシーンは、案外悪くなく(母親役の中島ひろ子の造型が嫌だが、早めに退場するし)、緊張感が持続した。島でのパーティシーンで、ホームビデオかテレビのドキュメンタリー番組の体(てい)の場面が繋がれる部分(画面外からインタビューする声が入り、カメラを意識して演じられる部分)があるが、変なこと(中途半端なこと)をするなぁ、と思いながら見たのだけど、こゝもその中身は、結構よく考えられた演出になっている。

 ということで、全体にダレることはないけれど、蒔田のシーンの分量が多く、彼女が主演女優のように印象に残る。120分に収める尺につめて、バランスを取ればよかったと思う。

#いつか、井浦新とARATAが統合される日を願って、コメントには井浦新と記載しておきます。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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