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[コメント] その手に触れるまで(2019/ベルギー=仏)

いつものカメラワーク、ジャンプカットの多用、劇伴なし、ラジオを除いて音楽はラストの暗転後のみ。ただし、本作は、主人公アメッドの行動・目的に強固な一貫性があり、とても分かりやすく面白い。
ゑぎ

 アメッドは、冒頭近く「大人のムスリムは女性に触らない」と女教師イネスに云う。大人のムスリムというのはアメッド自身のことを指していて、邦題は、そんなアメッドが、いかにして女性の手に触れるようになるか、を表しているのだが、原題は「幼いアメッド」とも云うべきもので、「大人のムスリム」という先の発言と対になっているのだ。

 イネス先生のことを「あいつは聖戦の対象だ」と云う、グロッサリーストアの導師は、もとより客観的な、アイロニカルな視点で描がれているけれど、彼が、アメッドに対して「お前は子供だからすぐに出所できるよ」と、いい加減な示唆をする部分も、原題の意味に掛かっている言葉だろう。この言葉で安堵するかに見えるアメッド。大人なのか子供なのか。

 導師との会話シーンから、警察や裁判の場面を一切割愛して、いきなり少年院の場面へ転換する処理。おゝやってくれる。こゝからも淡々とアメッドの日常生活を追うシーンだけで十分面白いのだが、イネス先生との面会のシーンのサスペンスは素晴らしい。本当にドキドキさせられた。あと、農場実習の場面で出て来る娘、ルイーズがなかなか可愛く、この娘をどう使うのだろうと思っていると、ビーツ畑でのキスシーンが用意されている。このシーンもいいのだが、直後にアメッドが口を洗う、というのがまたいい。

 そしてエンディングも極めてダルデンヌ兄弟らしいスリリングな演出だ。同時に、肩透かし感というか拍子抜け感、あるいは、まだまだ予測不能な状況にあるという複雑さも、まったくダルデンヌらしい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)ぽんしゅう[*] けにろん[*] セント[*] シーチキン[*]

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