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[コメント] 野性の呼び声(2020/米)

ジャック・ロンドンの原作は大好きな小説で、1935年のウィリアム・A・ウェルマン版(クラーク・ゲーブル版)『野性の叫び』も見ていたが、本作2020年版の方が、ずっと原作に近い。
ゑぎ

 1935年版は、いかにもハリウッドらしい娯楽作として作られていて、ゲーブルの他にヒロインのロレッタ・ヤングや、コメディパートのジャック・オーキーといったキャラクターが追加され、本来の主人公であるべき橇犬バックがあまり目立たない構成だったのだ。

 そういう意味で本作は完全にバックが主役であり、ハリソン・フォードも脇役に過ぎない。また、バックがフォードと一緒に暮らすようになる中盤以降も悪くはないが、本作の特筆すべき良い場面は、フランス語を話す黒人男性・オマール・シーと、モンゴロイドに見える女性・カーラ・ジーと共に、橇犬たちと過ごす、郵便のシーケンスに集まっている。凍った川(湖?)で、氷が割れて沈むカーラ・ジーをバックが助けるシーン。そしてオーロラを背景にした、リーダー犬スピッツとの闘い(こゝが全編中でも白眉)。そして、狼の霊に導かれる雪崩の回避シーンなど。これもヤヌス・カミンスキーの、傑出したテクニックの賜物だと思う。

 さて、実は、トレーラー(予告編)を見た際に、バックのCG臭さい表情に、とても違和感を覚え、楽しめるのか気になっていたのだが、本編が始まると、すぐに慣れた。こうやって、CGに慣らされていくのかと思うと悔しいが、仕方がない。いずれ、ほとんどの劇映画において「あるがままの被写体」といったものは、映らなくなっていくだろう。

(評価:★4)

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