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[コメント] 風の電話(2020/日)

広島の呉をスタートし、岩手の大槌町へ自動車で向かう映画。にも関わらず、これが意外とロードムービーにしないのだ。例えば、大阪も名古屋も東京も全くすっ飛ばして、いきなり埼玉に到着している(048局番の電話番号が掲載された看板が見える)。
ゑぎ

 埼玉の次は、忽然と福島(第一原発付近)におり、最後に大槌にいる、といった感覚で、ほとんど移動は描かれないのだ。

 抱擁、もしくは、それに準ずるような触覚の映画。主人公の女子高生、モトーラ世理奈は、映画冒頭では、叔母さん・渡辺真起子と一緒に住んでおり、登校時、玄関で叔母さんからハグされる(毎日繰り返されていることが想像できる)。そして、ちょっと後の場面で、ベッドにいる叔母さんにモトーラが抱きつく、というシーンが用意される。また、呉市近辺の場面では、豪雨災害後の整備中の荒地で、モトーラが寝転がって動かなくなる、という演出がある。地面での横臥も、とりわけ触覚を意識させる演出だ。

 モトーラのヒッチハイクの旅では、最初の車が、妊婦・山本未来を乗せた車で、レストランの座敷で、山本のお腹を触るカットがある。このカットは、極めて緩やかに前進移動しており、とても心地良い。

 西島秀俊の車で福島に到着した後、西島の家では、なぜかモトーラの家族が出現する。するとモトーラは母親と父親に背部から抱きつくのだ。

 そして、大槌の駐車場の場面。モトーラが震災時に一緒にいた友達の母親(モトーラにしてみれば、子供の頃の近所のおばちゃん)に偶然遭遇する。こゝでの抱擁とモトーラの謝罪が、もっとも心揺さぶられるシーンだろう。また、荒れ果てた我が家の跡地で、水溜まりの側で横臥する非現実的な演出も、ちょっとやり過ぎだとは思いながらも、地面での横臥の徹底として悪くないと思うし、最後の西島との別れの握手も美しい。

#モトーラは不思議なキャラだ。ずっとスリーピーアイ。また、ずっと高校の制服のスカートを履いており、フルショットが多いのもあって、全編に亘って脚が眩しい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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