コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー(2017/米)

矢張り、この人は一筋縄ではいかない作家性のある監督だ。ディズニーのファミリー向け映画の後に、こんなとんでもない問題作をぶっこんで来る。まずは前半の3つの長回しは、かなり挑戦的な姿勢じゃないか。
ゑぎ

 3つとは、家屋全景のロングショットで、ルーニー・マーラが画面奥の家の扉と、画面手前のゴミ捨て場を往復するカット、夜中のベッドの二人(マーラとケイシー・アフレック)の俯瞰カット、そして、マーラがキッチンの床に座ってパイを食べるカットを指している。これらは、文字通りの長回しであって、普通の感覚で云うと無意味に長い。つまり、プロットを経済的に運ぶということを拒否しているのだ。

 さて、本作はオフスクリーンで発生する唐突な音の設計がとても良く出来ている。幽霊譚なのだから、当たり前、というレベルを超えた豊かさがある。例えば夜中に響くピアノの音。クラクション。巨大なブルドーザ。マーラが窓を叩く音。先住民の襲撃の音。

 そして、本作はシーツの映画である。と云うと、これも至極当たり前な物言いの感じがするが、冒頭、夜中に上半身裸でリビングを見に行くアフレックの、その後ろを恐る恐る付いて行くマーラもまた、白いシーツを体に巻いているである。この場面に続く、ベッドに戻って、愛撫し合う俯瞰のカットは、上にも書きましたが、これが異様に長いのだが、こゝはとても触覚(手や唇の肌触り)を意識させるカットになっており、この後の、触れることのできない切なさを増幅させることに繋がっているだろう。本作中、この次に強烈に触覚を喚起するカットは、壁の隙間の手紙を取り出そうする場面であり、いずれにしても、触覚はマーラに触れるという意味で成し遂げられる(成就する)のだ。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)disjunctive[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。