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[コメント] ハン・ソロ スター・ウォーズ・ストーリー(2018/米)

雪の西部劇であり、砂浜の(海の見える)西部劇。予告編を見た時から、他ならぬロン・ハワードの西部劇なのだから、悪くなろうはずもないと確信したが、期待に違わぬ出来栄えだ。
ゑぎ

 まずは、光に対しての自覚的な演出に引かれる。巻頭は黒画面にスパーク。続くシーケンスは、夜でずっとローキーだ。ソロ=アルデン・エーレンライクもヒロインのキーラ=エミリア・クラークも顔がよく見えないレベル。しかし、ウォームの女王に尋問されるシーンで、ソロが石を壁に投げ、いきなり光が射し込むのだ。この光の扱い良し。

 その後のカーチェイスもまずまずの出来だが、戦場のシーンで、ウディ・ハレルソンタンディ・ニュートンが登場してからの前半部が矢張り良く出来ている。チューバッカとの出会いを経て、列車強盗にいたる、雪の西部劇のシーケンスが白眉だろう。(ただし、このシーケンスの最後に、ハレルソンに「殴って悪かった」等と云せてしまうロングショットは、ロン・ハワードらしい甘さを感じる)

 中盤はスペースオペラらしい宇宙活劇部分も盛り込まれるが、ドロイドL3にまつわる部分は、私には理に落ちた感がし、少々興醒めだ。惑星ケッセルからの脱出行で、ミレニアム・ファルコン号の操縦席のソロの横に、チューバッカが座るシーンには感激したが。

 そして、舞台が海岸のある砂丘、コアキシウム精製施設のある星に移ってからが盛り返す。何と云っても、この場面の風がいい。このような画面の触感を楽しむことが映画を見る快感だ。まるで、アメリカ先住民(インディアン)のような人々。盗賊エンフィス・ネストが忽然と再登場するカットも怖さが良く出ている。

 ラストの決闘シーンは、その簡潔さが良いのだが、ただ、こゝはもうちょっと派手に演出しても良かった。しかし、ホルスターから抜いて撃つ、という定番の銃の早撃ちを演出しなかったのは、考えた上での判断なのだろう。思い起こしてみると、ハン・ソロは、惑星タトゥイーンのモス・アイズリーの酒場で登場した際、ホークス『脱出』のハンフリー・ボガートや、フォード『シャイアン』のジェームズ・スチュワートのように、テーブルの下から相手を撃つ、という、ある意味卑怯だが、早撃ちの決闘とは対極の、実利的な(そしてある種アイロニカルな)演出がほどこされていたわけで(この際、どちらが先に撃ったのか、という事柄は置いておくとして)、早撃ちの拳銃さばきの見せ場は、ジャンゴ・フェットの特権なのかも知れない。いずれ、そのクローンである、ボバ・フェットが見せてくれることを期待したい。

 或いは、本作のハレルソンは、戦場での登場シーンで見事な銃さばきを見せるだけに、ラストの決闘シーンでも期待をさせるのだが、矢張り現代西部劇としての慎ましさを示した演出なのだ。リー・マーヴィンジョン・ウェインも死んでしまった後の西部劇なのだから。

#西部劇は1976年に『ラスト・シューティスト』で息の根を止められたが、その2年前に、『スパイクス・ギャング』によって瀕死の重傷を負わされている。リチャード・フライシャードン・シーゲルによる西部劇の葬儀。その両方に立ち会ったのが、他ならぬロン・ハワードなのだ。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Orpheus 赤い戦車

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