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[コメント] レディ・バード(2017/米)

冒頭、車の中で「怒りの葡萄」の朗読を聞いて涙する母と娘。直後の顛末の見せ方、そのスピード感にうなる。ラストも車を運転する場面のフラッシュバックがあり、母への想い、わが町サクラメントへの想いが語られるので、全体に本作は自動車の映画であり、母娘の映画であり、サクラメントという町についての映画だったという心象が強く残る。
ゑぎ

 悪い癖で「これは〜の映画だ」などと、ついついレッテル貼りをしてしまうのだが、勿論、一本の映画には多くの側面や切り口が見い出せるわけで、レッテル貼りは、感想をまとめる上での単なる方便に過ぎないです。本作も、一方で、シアーシャ・ローナンのロスト・バージンを主軸にしたプロットで構成されており前半はルーカス・ヘッジズ、中盤以降はティモシー・シャラメとの恋愛譚として括るべきでしょう。あるいは父親や兄とその恋人を含めた家族の物語だし、何よりも、カトリック系の高校を舞台とする学園モノと云うべきかも知れない。学生演劇でやるミュージカル場面(練習風景含めて)がとても楽しい。

 しかし、それでも、矢張り、これが母娘の映画だと考えたくなるのは、ヘッジスやシャラメの扱いが中途半端である、という理由もあるのだが、例えば、本作のクライマックスは、後半の空港のシーンだと思うからです。この空港の場面は全く普通じゃない。主人公のローナンを捉える視点は早々に捨て去られ、別れの場面も旅立ちの場面も割愛されるのだ。代わりに映されるのは、車を運転する母親・ローリー・メトカーフとその悲痛な表情で、私はこの構成・演出を思い出すと、今でも涙がこみ上げて来る。素直にグレタ・ガーウィグの才能を称賛したいと思う。

 さて、2002年から2003年を時代背景とする映画だが、画面の肌触りは全編に亘ってザラザラしており、1970年代のフィルムの触感がある。斜光や太陽光の取り込み、といった特徴も、その感を強くさせる。この撮影も本作の題材によくマッチしており、ポイントを上げる。IMDbのTriviaによると、ガーウィグは、当初16ミリでの撮影を希望したが断念したとのことで(デジタル撮影後、ノイズを強調したらしい)、こういったこだわりも映画作家として好ましいと思う。今後に期待大だ。

(評価:★4)

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