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[コメント] 花筐 HANAGATAMI(2017/日)

正直なところ、大林作品は随分と長い間、敬して遠ざけていた(つまり敬遠していた)のですが、いやこれは面白かった!今さら遅いと云われそうだが、反省することしきりです。
ゑぎ

 という訳で、近作を全然見ていないので、どこまでが最近でも見られる特質なのか、分からないけれど、実は、本作も昔から大嫌いな大林演出が横溢しているのも事実なのだ。しかし、この徹底ぶりはあなどれないです。

 もう神経症的な、鳴りっぱなしの音楽。甘美な旋律からバッハの無伴奏チェロ組曲への連携と、そこに入る断続的な不協和音や笛と鼓。カッティングは、強迫観念に駆られたように、アクション繋ぎ(というか、多くは、2カットを繋いだカット・ズームアップ)を多用する。マルチ撮影や、補完ショットの利用ではなく、同一テイクのカットでブロウアップをしてでも、アクション繋ぎをする(バストショット構図で撮ったカットを途中から、光学処理でアップに焼き直したカットを繋いでアクション繋ぎをしている等)。超クローズアップ好きの、サミュエル・フラーでも、こゝまでの徹底はない。撮影監督が編集も兼ねているが、そうでなければ、この繋ぎはできないだろう。もうパラノイアックな暴挙だと思うのだが、バカバカしさと怒涛の展開感がよく出ていて、とっても面白いのだ。ずっとニヤケっぱなしで見た。

 また、キャラクター造型については、全員一貫性がある上に、皆、よく描き分けられていて、このディレクションは大したものだと素直に思う。女優だけ例にあげるが、矢作穂香−美那は超絶美少女だ。また、声がいい。山崎紘菜−あきねが一番普通だが、自然な可愛らしさがあって、これも印象に残る。門脇麦−千歳は、彼女らしく捻った役柄。寒がりで後ろ姿に「寒い」の科白の繰り返し。常盤貴子も見事な貫禄だ。(男優については割愛)

 吐血。赤いバラの花弁。指を切った血。胸に噛みついた跡の血。赤い鯛の山車。口紅。口紅で描いた鉢巻の日の丸。太腿に流れる血、といった赤色のイメージの濫発。美那の「いけませんわ」を筆頭に決めゼリフの執拗な反復。古い(1950年代の)3D映画のような、スクリーンプロセスを思わせるようなデジタル合成の奇妙な質感。根岸季衣池畑慎之介がいる娼館(カフェ)の異世界の造型。兵隊の案山子の増幅イメージ。山中貞雄への言及。他にもいろいろ詰め込み過ぎており、従って観客にとっても、いろいろ指摘したいことがあり過ぎる映画だ。書きたいことはいくらでも出てきそうで、私のこのコメントも、いつもに増してとりとめもない事柄を書き連ねてしまっている。全体に、もうやけくそ感満載の映画でもあるのだが、伊藤孝雄のエピローグはいくらなんでも不要だろうとか、エンディングのディレクターズ・チェアは直截的過ぎるだろう、とか思ってしまうが、こゝまで好きなことをやれている、という爽快感は、観客としても共有できる。快哉を叫びたくなる映画であることは間違いない。

(評価:★4)

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