コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 彼女がその名を知らない鳥たち(2017/日)

蒼井優の家を訪れた百貨店の営業担当・松坂桃李が、泣きだした蒼井に唐突にキスをする、このシーンが本作で一番いいシーンと思った。松坂と蒼井の濡れ場もよく撮れている。蒼井の胸を松坂の手で隠す演出だって悪くない。
ゑぎ

 タクラマカン砂漠の話。ウイグル語でタッキリマカン。この話の後の、天井から砂が降って来るエフェクトも目を引く。本作のシーン繋ぎや空間処理には、ちょっと凝った部分があり、他にも、日本の部屋からリゾート地の海岸へワンカット内で場面転換したように見せたりする。

 しかし、本作も、中盤、終盤になるにしたがって、どんどん違和感を覚えるようになる。まず、蒼井の姉の家に、阿部サダヲが迎えに来て、姉の子供達と一緒に食事をするシーン。夫(子供の父親)の話をする姉の違和感が大きいが、それ以上に豚足の扱いがひっかかる(なんかメッセージ性が強すぎる気がしてしまう)。

 そして、過去の事件に関する虚実。蒼井とかつての恋人・竹野内豊との顛末と、阿部の関わりが明らかにされるにしたがって、信じがたい恣意的なプロットだと感じてしまうのだが、ま、それは良いとしよう。映画なのだから。私がよりひっかゝるのは、夕陽ヶ丘の高台のベンチのシーン(「夕陽ヶ丘浄苑」という看板が見えるベンチ。この固有名詞のワザワザの映しこみも違和感あるわぁ。)から、いきなりフラッシュバックして、回想シーンに繋げる処理なのだ。これ誰の回想?普通なら、阿部と蒼井の二人の回想と捉えるべきだろうが、演出及び繋ぎのせいで、誰の回想でもなく、強いて云えば、作り手(白石和彌)の回想としか私には受け取れないのだ。この回想を全部無くした方がずっと良い映画になると私は思う。鳥(ムクドリ?)を見る蒼井の真俯瞰と暗転後のナレーションも、回想がない方が、より唐突で効果的だと思う。

#備忘でロケーション等について記述。

・大阪を舞台にした映画で、蒼井と阿部は大阪弁を喋るが、古くっさい、ミドルエイジ以上しか使わないような大阪弁だ。スカタン!とか。極楽やぁ、とか。

・二人が住むマンションは京橋駅近くか。大衆食堂日本一のシーンでは、JR大阪環状線の電車が見える。

・松坂が女を誘って行くのは、あべちか(阿倍野橋地下街)。桜ノ宮あたりの川べりのシーン。大阪城と環状線と水上バスが後景に見える。

・蒼井が松坂と歩く坂道では、プレートに生玉寺町(いくたまてらまち)とある。この後、夕陽ヶ丘へ。そう、『貸間あり』の舞台です。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)irodori ぽんしゅう[*] jollyjoker けにろん[*] 水那岐[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。