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[コメント] メッセージ(2016/米)

ファーストカット、画面全体が黒く、俄かには何が映っているのか判然としないのだが、徐々に木目が見え、天井の移動撮影だと分かる。大きな窓のある湖畔の家のリビング。その天井だ。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 事件が起こった直後、人けのない大学構内をエイミー・アダムスが歩く場面で、道にかかった陸橋の、その天井をファーストカットと同じように移動撮影で映すカットもある。モンタナの事件現場。ヘリコプターでの移動の空撮では、広大な大地と、船の威容さ、軍施設の禍々しさに括目するが、それに対比するかのように、実際の施設内の閉所感−テントの天井の低さが強調される。到来した船は、遠目には直立した巨大な楕円形だが、人が真下に近づくと、大きな天井として画面で示される。そして、船の内部は四角柱の無重力空間で、側面が天井でもある、ということが鮮やかに描写される。という訳で、本作は圧倒的な天井の映画なのである。押し潰されるような圧迫感が映画全体を支配する。その暗喩を穿鑿することも楽しいが、こゝではやめておこう。エイミー・アダムスが、ただ一人で船内に入って行く場面では、天井も透明の壁も取り払われ、初めて直接的なコンタクトが描かれるのだが、この場面では、もっと天井の無い解放感があった方が良かったのではないか、と思ってしまった。とは言え、全編荘厳な緊張感は途絶えない。

 尚、爆弾が仕掛けられる展開はいくらなんでも拙速だと感じる。さらに、後半のエイミー・アダムスの描かれ方(その活躍、或いはその人生の選択)、これに多くの観客は参るんでしょうけど、私は理屈に過ぎるというか、理に落ちていると感じてしまう。矢張り、フラッシュバックをこんなに使わないと描けない映画は、映画にしない方がいいんじゃないか、という感覚も持つ。美しい自然描写、美しい自然光で描かれたフラッシュバックが、全て理屈のためのものだったというのは興醒める。

(評価:★4)

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