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[コメント] そこのみにて光輝く(2013/日)

この世からタバコとライター、あるいは自転車がなくなったら映画もなくなるのではないか、いや、逆に、これらがある限りは映画はあるんじゃないだろうか。という愚にもつかないことを想うぐらい、タバコとライターと自転車の映画だ。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 実を云うと、もっと、こじんまりとした、スケールの小さな作品だろうと予想していたのだが、なんのダイナミックな画面を上手く繋いでいて、全く退屈することなく面白く見た。つまり、娯楽性ということでも、かなり考えて作られている。例えば、唐突な発破のシーンの挿入。或いは競輪場のスペクタクル(VIPルーム?からコースへの視点転換)、祭りの準備と花火などなど。また、随所にキャッチーな場面繋ぎがある。この例で云うと、ダイナマイトの爆破の後に、海中で泳ぐ綾野剛に繋ぐ部分。池脇千鶴と綾野とのラブシーンの途中で綾野を高橋和也にすり替わらせるベッドシーン(こゝは高橋の刺青が効果的だ)。ベンツの中で暴行された後、夕陽を見る池脇に、画面外から花火の音を聞かせる部分など。どれもプリプロダクションで設計可能な部分だと思うし、どこまで演出家の直接の仕事か分からないが、相当手練れの映画作りという感覚を持った。

 そして、タイトルに「光」という文字を持つ映画だけあって、美しい光と影の連続でもある。タイトルの通り、こゝぞという場面の光を印象づけるための対比ということもあるのだろう、ローキーの画面が多いのだが、中でも光量の少ない屋内のシーンがいい。映画ならではのドキドキを感じる。映画にしかできない、テレビや演劇ではできない決定的な事柄の一つはローキーの画面造型なのだ。

 尚、父親の異常性欲をめぐる作劇はつまらない。けど映画的な論点でもないので、ま、いいか。あと、菅田将暉は主要キャストの中でも一番良いと私も思いますが、祭りのシーンで高橋を刺す前のテンパった菅田のカットは近すぎる。画角は常に作者の被写体に対する感情で決まると思いますが、このカットは作者が彼に入れ込み過ぎているように思え、かなり違和感がありました。もっと突き放すべきでしょう。

(評価:★4)

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