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[コメント] 太陽は光り輝く(1953/米)

歩く人の映画。なんて云うと、劇映画で被写体が歩かない映画なんて殆どあり得ないだろうというお叱りを受けそうだし、何よりフォード映画においては全ての作品で登場人物の歩く姿を思い起こすことができるのだが、しかし、ことさらに本作が歩く人の映画であるという思いに突かれるのは矢張り奇跡的に美しい葬送シーンがあるからだ。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 どうしてこんなに感動するのだろう。緩やかな歩度で人々が葬列に参加していくだけで、整然と人が歩く画面だけで、どうしてこんなに涙がこみ上げるのか。勿論、冒頭のステッピン・フェチェットが川の桟橋で釣りをしており、蒸気船に向かって唐突に奇妙な笑顔で手を振るシーンから、緻密に巧妙に観客の感情を揺さぶっていく演出が奏功しているからであり、別の言葉で云えば、人間の誇りや尊厳についてのフォードらしいセンスが葬送シーンに向かって積み上げられ構築され昇華していているからなのだが、しかし、この葬送シーンの整った画面の美しさには、もう落ち着いていられない程、うろたえてしまう程感動してしまう。

 歩くシーンではもう一つ、ラストのラスト、プリースト役のチャールズ・ウィニンガーが家屋のドアから廊下の奥へ歩いていくカットが『捜索者』のラストを思い起こすカットで明記しておきたい。

 また、『捜索者』との繋がりで記しておくと、本作の鍵となる葬送の対象−死者の役を『捜索者』でジョン・ウェインが思いを寄せていたドロシー・ジョーダンがやっていて、登場カット−川の桟橋に立った彼女が、後景に蒸気船を映しながら、体を反転させて歩き出すカット−の造形美にも瞠目する。なんという丁寧な画面。実はこのワンカットだけ既に涙が出そうになった。

 あと前作『プリースト判事』でも最も印象的な脇役の一人だったジョン・フォードの実兄フランシス・フォードが本作では飲んだくれの猟師を演じていて、その相棒でいつも一緒にいるのが若きスリム・ピッケンズだ。考えたらピケンズは後年、フランシス・フォードのキャラクタを引き継いだような役を何作もこなしており、このコンビも映画ファンにはとっても嬉しい。

#その他の配役について備忘。

ジョン・ラッセルは富豪の跡取りで遊蕩児アシュビー。相変わらず悪顔だが、本作ではとっても男前の役。

・ヒロイン、ルーシー・リー役はアーリーン・ウェランという女優。その養父はラッセル・シンプソンで医者。プリーストの友人。

ジェーン・ダーウェルが町の有力者の婦人役。メエ・マーシュが一緒にいる。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)KEI[*] ぽんしゅう[*] 赤い戦車

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