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[コメント] 恋人(1951/日)

タイトルバックは、カット絵。タイトル開けはコタツの正面カット。勝手口で村瀬幸子と御用聞き。表でベルが鳴る。応接間から庭へ出る大きな窓に池部良がいる。彼は新聞カメラマン。前半の室内における前進後退移動の反復は目を引く。
ゑぎ

 邸の主・千田是也(白洲次郎がモデルらしい)、庭で土を耕す。花壇作りか。池部来て手伝わされる。「とんでもハップンだよ」という科白がある。製作年の1951年は『自由学校』と同年なのだ。クリーニング屋さんで伊藤雄之助が登場。本作の彼は、いつもと比べても、ワザとらしい台詞回しで、退場の間も変。このあたりは上手くいっていない。2階の部屋で机についている池部。うつろな表情。煙草の灰。村瀬が近づく。アニー・ローリーのオルゴール調のBGMがかかる。時間が遡り、フラッシュバックが始まる。

 ヒロインの久慈あさみの登場は、仲人の北林谷栄が来て村瀬に喋りまくる場面。2階の部屋のベランダで登場する。久慈は見合い相手と結婚する話が決まっているのだ。

 池部の職場は新聞社なので銀座の近く有楽町あたりだろう。久慈から、映画を見ようと電話で誘われる。二人は幼馴染。久慈の結婚前日だ。映画は『哀愁』。別れのワルツのダンスシーンが、まるまる挿入されたのには驚いた。銀座の舗道を歩く二人を移動撮影。こゝで、市川崑が横切ったと思ったのだが、インターネット上で裏付けになる情報は見つけられなかった。私の見間違いか。続いて二人は電車に乗ってスケート場へ。池部、スケート上手い。シャモの天ぷらを食べた後は、ダンスホールへ。ダンスはトロットしかできない。音楽は「埴生の宿」。司会は森繁久彌だ。ダンスホールの後、二人は小田急の終電を逃してしまう。地下道で逡巡する二人。宿屋へ行くか、歩いて帰るか。小田急と京王への案内板が目立つ。ダンスホールは新宿だったと分かる。二人が歩く未舗装の道路がでこぼこで感慨深い..。と梗概ばかり書きましたが、当時の風俗やロケーション含めて楽しく見られたが、実はなんだか普通の出来栄えだと思う。

 池部と久慈が、まだ終電を逃す前に挿入される、村瀬と千田が、コタツで会話するシーン。娘(久慈)の帰りを待ちながら、「まだ10時半」という。ここが一番良いシーンだ。開巻がコタツのカットだったことの意味が分かる。

(評価:★3)

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