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[コメント] アスファルト・ジャングル(1950/米)

室内の複数人物を縦構図で被写界深度を深くして撮ったカットが頻繁に現れる(パンフォーカスというほど後景の焦点は鮮明じゃないが)。
ゑぎ

 同年製作で撮影者も同じハロルド・ロッソンの『勇者の赤いバッヂ』では、屋外シーンでも特徴的に使われている画面造型だ。確かに当時の流行だったのだろう、B級西部劇などでもよく出てくるし、ワイラーは勿論、ホークスでさえゴク一部でやっている。しかし私には人間の見た目の光景とかなり異なって感じられ、イマイチ好きになれない。

 また、本作の目に留まる特質の一つは、夜の屋内シーンがどの場面も少々暗い点だ。今の日本の夜の屋内が明る過ぎるのかも知れないが、悪党のマーク・ローレンスのアジトはともかく、弁護士・ルイス・カルハーンの居間のシーンも普通の感覚で云うと暗すぎるように思う。ただ、だからこそ少ない光量での照明の面白さが際立つし、このローキーが暗黒映画の雰囲気を創り出している。例えば、屋内での切り返しで照明に違和感のあるシーンが一部あるのだが、こういうのもワザとやっているのではないかと思う。顕著なのは、犯罪実行後、ルイス・カルハーン+ブラッド・デクスター組にサム・ジャッフェスターリング・ヘイドン組が対峙するシーン。ジャッフェに対する照明だけ陰影があり過ぎて、まるで別の部屋のような感じになっている部分がある。しかし、これによりジャッフェの狼狽した感覚がよく伝わる効果に繋がっているのだ。

 さて、役者に目をやれば、ジャッフェの貫録、存在感をまず第一に上げなければいけないが、他キャラクターも実に充実している。中でも、大好きなジーン・ヘイゲン(『雨に唄えば』では悪声の大女優役)がラストまで絡んで、尚且つ泣きながら付けまつ毛を外すという見せ場が与えられていることに感激する。その他、悪徳刑事を演じるバリー・ケリーが後半はもう出ないのか、と思っているとマーク・ローレンスを激しく平手打ちするシーンが出てきたり、中盤まであまり目立たないジェームズ・ホイットモアも、ラストでマーク・ローレンスに対して暴力的に激昂するシーンがあったり、ブラッド・デクスター(『荒野の七人』のひとり)もほんのワンシーンのみの登場ながら、ヘイドンとの早撃ち対決シーンがあり、それぞれ強烈な印象を残す。しかしこの銃撃シーン、簡潔でいいですね。

#冒頭、ヘイドンが連行されて面通しを受けるシーンの3人の内のひとりは若きストローザー・マーチンだ。これははっきり分かる。オドオドした表情。そしてマリリン・モンローは流石にこんなジジイの愛人はないだろう、と思うぐらい可愛い。

(評価:★3)

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