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[コメント] その後の蜂の巣の子供たち(1951/日)

1948年の『蜂の巣の子供たち』の続編。子供たちや復員者のおじさんは継続して出て来るが、前作の役柄の継承ではなく、前作の出演者が、伊豆の山間部で、共同体を作った、という設定だ(というか、実際に清水宏と共同生活していたらしい)。
ゑぎ

 なので、前作劇中で亡くなった少年も登場する。冒頭近く、雑誌社の女性記者から取材を受けたこの少年は、「あれは目をつむれ、と言われた」「映画を見たら死んでいた」と応える。

 開巻は伊豆の地図。続いて山間の道をカメラは後退移動、横移動を繰り返し、雑誌社の女性が歩いて来るのを捉える。あゝ、これぞ清水宏のオープニングだ!復員兵のおじさんの登場も、丘のような高低のある道を回りこんで横移動で見せるのだ。

 本作の主人公はしんちゃん(久保田晋一郎)とユタカ(岩本豊)と云っていいだろう。後半は、しんちゃんのかつでの浮浪児仲間2人が訪ねて来、皆の衣類を盗んで逃げたことによる騒動がメインのプロットになる。しんちゃんは、逃げた2人の捜索で、熱海から東京まで出る。上野の西郷隆盛像、新宿、銀座三越前のロケ撮影が見られる。また、ユタカはおじさんと一緒に大阪を捜索する。こちらは、梅田、心斎橋、道頓堀戎橋、千日前、難波の当時の風景が映る。前作の悪役、片足のオジキも登場する。この後、逃げた2人が神戸にいる、ということが分かった後、神戸の場面を割愛し、伊豆への帰路の汽車のシーンになるのは、フィルムの喪失なのだろうか。

 さて、もう少しだけ書き留めたい場面を記述。ユタカは大阪出身だが、同郷の令子という前作には出ていなかった女の子が共同体に参加しており、この2人の喧嘩のシーンが実に面白い。ユタカは大阪の地下鉄で暮らしていたので小便臭いと云われる。

 また、本物の熱海市長なんかも登場するが、科学者の先生で登場した原田三夫が、風力の説明をする場面でアニメーションが使われる。これが結構よくできているのだ。軟風、和風、疾風、強風、烈風、颶風の違いを説明。

 そして、エピローグの伊豆の山麓のシーン。皆で立てた学校の前で演じられる小さなコント。この時最後に超ロングにカメラが引くのが、素晴らしい。

#主要映画サイトにおける「復員兵のおじさん」の演者の記載について前作『蜂の巣の子供たち』では島村修作、本作では 大庭勝となっているが、本編を見る限り、間違いなく同一人物の変名。

(評価:★3)

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