[コメント] 姿三四郎(1943/日)
本作の時点では、黒澤らしい空間を圧縮するような圧力の高い画面造型が全く見られない。『一番美しく』(1944)になると、パレードのシーン等で見ることができるようになる。
しかし、冒頭の小杉義男達が、大河内伝次郎=矢野を闇討ちする埠頭での対決、皆海へ投げ飛ばされる場面等は、張りつめた空気がよく演出されて力強いシーンになっている。三四郎が脱いだ下駄で時間経過を表す演出も瑞々しい。あとは、有名な蓮池のシーンも、鼻緒を結ぶシーンも特記するほどのことはない。
ヒロイン小夜−轟夕起子は『ハナ子さん』と同年。彼女のシーンがもっとあったことが断り書きで挿入されるのだが、残されたフィルムを見る限りは、人格が描かれているとは云いがたい。散逸したフィルムを見てみたいと思う。
やはり、月形龍之介=檜垣源之助とのラストの決闘シーンの「風」は特筆すべきで、大した表現主義的造型だ。檜垣に締められる際に、蓮池のハスのイメージが浮かぶモンタージュは納得性が低い。
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