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[コメント] 暗い鏡(1946/米)

部屋に置いたカメラから撮った窓外の向こうの摩天楼。これは書き割りか。右にパンして屋内を見せながら、奥の部屋のドアの向こうへ移動し、倒れているスタンドや割れた鏡を見せ、最後には倒れている男を映す。
ゑぎ

 倒れている男の背中にはナイフが刺さっている。という始まりの犯罪映画。担当刑事はトーマス・ミッチェルで、容疑者は、オリヴィア・デ・ハヴィランドだ。彼女のアリバイを調べていくと、早々に、一卵性双生児、テリーとルースだと分かるのだ。しかも、誰が見ても、区別がつかない程似ているという設定だ。実は、双子と分からせるのをもっと遅らせて、ひっぱった方が面白かったんじゃないかと、最初は思ったが、本作は、ある行為が双子のどちらの行いなのか立証できない、逆に、どうやって立証するか、という面白さを狙ったものなのだ。また、捜査場面が続き、ミッチェルがもっと出ずっぱりかになるのかと思ったが、検察が立件を投げ出すので、ミッチェルは心理学者のルー・エアーズに心理分析を頼む。なので、エアーズによる探偵物語、及びエアーズとハヴィランドとの恋愛モノに代わっていく。

 まずは、双子を具現化する二重露光の技術、演出タイミングについては見事の一言だ。特にワンカット内で、二人が重なってこちらを見るカットなんて、どうやっているのか全くわからない。鏡の前に一方を座らせて、他方を鏡に写すカットは、スクリーンプロセス合成だろうか?

 二重露光以外では、屋内における俯瞰気味のカットが多いのが特徴だ。クライマックス前にルースが叫ぶカットが顕著だが、俯瞰による不安感の創出と突き放しの視点、より客観視の感覚を醸成している。

 ただし、ちょっとイヤらしい演出も散見される。例えば、ルースがパーティ会場のバルコニーから階下の路上を見る場面。なんか今にも飛び降りるんじゃないか思うぐらい、意味深なカットに仕立てている。他にも、ルースに成りすましたテリーが、チェストの抽斗から何かを取るという演出も、同様に意味深な見せ方で、取ったのは、ただのシガレットケースと分かって、なんじゃそりゃと思ってしまった。あと、本作のハヴィランド、シワが目立ってオバサンに見えるカットと、照明が上手くいき、綺麗に見えるカットに結構差がある。

(評価:★3)

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