コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 日本の首領 野望篇(1977/日)

三部作中この二作目が最もグッと来た。それは多分に好みの問題だろう。まず本作から三船敏郎が関東同盟のドンを演じるようになり、伴って関東同盟側の描き方に厚みが出たこと。さらにこれによって美術装置の見せ場がかなり増えたという点が大きい。
ゑぎ

 また、二人のヒロイン、金沢碧岸田今日子の造型が頑張っている。デヴィ・スカルノをモデルとする金沢碧は何を考えているのか判らないという難はあるが『めまい』のキム・ノヴァクのような変貌のモチーフが与えられており、初々しく期待に応えている。岸田今日子と松方弘樹との恋愛描写も最初は辟易するんじゃないかと思わせるのだが、これが案外しっとりしていていいのだ。二人の港での会話シーンが全編で最も良い場面ではないか。ヒロイン二人は全くバラバラに登場するが中盤から絡みだし、ラストにはメインプロットである松方弘樹の運命に大きく関わって収束していく。このあたりの見せ方のスピード感と佐分利信高橋悦史による重々しい締めの配置の呼吸も見事だ。

#備忘で配役など。

 冒頭から成田三樹夫が目立つ。高橋悦史の病院の看護婦役が金沢碧。金沢と恋仲になる若いやくざは星正人か。にしきのあきらも冒頭近くから登場。この役も面白い。銀行の頭取・渡辺文雄に惚れられたり、ひろみ麻耶を助け、二人で逃げたり。前半から中盤にかけて藤岡琢也田口計がコンビで活躍。田口計もいい。菅原文太は本作では中島組配下の嵐寛寿郎の組のやくざ。小沢栄太郎は石油ブローカー。三船の下には佐藤慶小松方正田中浩小池朝雄らがいる。田中は株主総会のシーンで目立つ。内田朝雄は前作と同じ右翼の大物。「日本には二人のドンはいらん」金子信雄は本作でも代議士を演じるが前作とは違うようだ。今回は田中角栄か。野坂昭如がなぜか鉄砲玉の役。その妻は橘麻紀。小沢、金子らの会食シーンで出てくる香港人は狂言師の茂山千五郎

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] disjunctive[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。