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[コメント] ハスラー 2(1986/米)

映画はこれほどまでに人に影響を与えるのか!と呆れつつ驚かされた作品。お陰で小銭稼ぎには困りませんでした。レビューは「実録ハスラー?物語」
ごう

当時ボーリング場の隅にひっそりとあったビリヤードコーナーに中学2年生の俺は入り浸っていた。ポケット2台、4つ玉2台。ポケットには若い兄ちゃんがいつもいて、一人黙々と玉を撞いていた。まるで手品のように玉がポケットに落ちていく。

俺が昼飯代に貰えるのは500円。それを女子から牛乳を貰いまくって無理矢理浮かせて、放課後に直行。でも500円では1時間しか撞けない。おまけに玉も兄ちゃんのようには入らない。俺は意を決してその兄ちゃんに声をかけてビリヤードを教えてもらうことにした。

気さくな兄ちゃんだった。理論と練習方法をきちんと教えてくれた。どこを狙うのか、ブリッジはどう作るのか。それからの俺はまず大き目のポケットマッチの外側だけを立てて、キュー先をその中に通す素振りを毎日100回練習した。これならお金もかからない。受付のオッサンもさすがにキューだけはタダで貸してくれた。

1年後、街にはプールバーなるものが溢れ返り、行けばそのどれもが待ち時間無しでは入れないという異常事態になっていた。ボーリング場の隅っこにひっそりとあった4台も10台以上増えて存在感を増し、そしてそのどれもがポケットだった。兄ちゃんはそんな雰囲気が嫌だったのか、シマを替えたのか、来なくなっていた。

俺は小遣い稼ぎには困らなかった。初めは友達連中とだけだったが、彼らもわざわざ負ける試合はしなくなる。そのうちしらない高校生なんかともやるようになった。一度調子に乗ってたらゲーム後待ち伏せされた。それ以来ヤバそうな(連れの多い)相手だと、わざと外してショボ勝ち程度にしたこともあった。

そんな中、大会が開催された。俺は中高生の部。俺は一般の部に兄ちゃんが参加していないかどうか探してみた。俺の成長ぶりを観て欲しいと思っていた。兄ちゃんはそこにいた。顔を合わせたのは久しぶりだった。お互い短く声をかけあってそれぞれの試合へと向かった。

俺の2試合目。相手は明らかに高校生。そんなに上手くはなかったが、連れも含めてあまりガラは良くない「お山の大将」的風情の奴だった。1ポイント先取した時、俺は確実に前の待ち伏せの時を思い出していた。正直「負けようかな」と思った。でもこの日は兄ちゃんが見ていた。こんなところで負けたくなかった。

俺は次のセットも9ボールを落とした。2−0でストレート勝ち。

兄ちゃんは「上手くなったね」と言ってくれた。

結局俺は3位止まり。兄ちゃんは優勝した。俺は「一回俺と撞いて下さい!」と言いたかったが言えなかった。終了後軽く挨拶を交わして俺達はわかれた。そしてその後俺が高校生になって足が遠くなったこともあり兄ちゃんとは2度と会わなかった。

俺はその兄ちゃんの名前を知らない。だが俺にとってはその兄ちゃんがポール・ニューマンだった。

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何と言ってもこの映画で印象的なのはフォレスト・ウィティカーでしょう。あの手法は参考になりました。うそです。それにしてもこの映画ビリヤードを流行らせるほどビリヤード自体をカッコよく撮ってるシーンは少ないよねぇ。そこはやっぱりトム様の魅力が大きかったのかしら?

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (9 人)capricorn1 林田乃丞 死ぬまでシネマ[*] ジェリー こしょく ナム太郎[*] mimiうさぎ[*] ペンクロフ Myurakz[*]

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