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[コメント] ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011/米)

鍵穴の在り処と6件目の留守電の内容が気になって、最後まで見入ってしまう。中盤、オスカーが間借り人に心情を吐露した辺りから涙腺は緩み出してはいましたが、終盤、怒涛の家族愛についに嗚咽が洩れてしまいました。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 9.11。

 僕はこの事件に関するいろんな映像や作品を観てきましたが、どこか他人事のようで「大変な事だった」と想像はできても「悲しい事だった」と実感することができませんでした。

 この作品を観るまでは。

 今までのそれは、余りにもたくさんの人が亡くなり過ぎてスケールが大き過ぎたり、正義感とか政治的原因とかに捉われ過ぎたりして、ミクロな視点、たった一人の父親を亡くした一人の子供目線で描かれていなかったからかもしれません。

 父親の最期の呼びかけに応えられなかった事が心のしこりになっていたオスカー……留守電に吹き込まれる9回の呼びかけと、その背後のテレビモニターで崩れていくタワービルのシーンではもう、「周囲の人の迷惑になってますよ」ってくらい泣いてしまいました。

 間借り人は若くして家を出た祖父で、何かオスカーの役に立てればと思い越してきました……おじいちゃんはオスカーの父親代わりに一瞬でもなれたように思うし、橋や公共交通機関を利用したり高い建物に入れるようにしてくれました。

 何となくオスカーと距離を置いているようだった母親……オスカーの鍵穴探しに先立って全てのブラック家を訪問済みだったこと、そして、毎回オスカーが出掛けて「ただいま」と帰ってくるまで心配で心配で仕方なかったことが明かされたときにも号泣しました。

 そして、父親が死んでしまって悲しかったのはオスカーも母親もおばあちゃんもおじいちゃんもみんな一緒だったってこと。

 僕は「羅列」に弱いみたいで。畳み掛けられるようで。

 お父さんは○○してくれた、○○もしてくれた、○○だったし○○なんだ! みたいな。

 去っていくおじいちゃんが乗ったタクシーに向かって叫ぶオスカーの羅列。

 いろんなブラックさんがオスカーを様々な態度で出迎えてくれたその羅列。

 ラスト、母親と二人語り合う父親の思い出の羅列。

 とにかく羅列羅列羅列、愛の羅列で、もう嗚咽に近い泣き方をしてしまいました。

 9.11。僕は他所の国で起きた悲惨な事件をようやく自分の事のように悲しめるようになりました。

 日本で起きた3.11。きっとたくさんのオスカーが日本にもいて、それを乗り越えていかなくちゃいけないって事を思うと、僕は可哀相で愛おしくて仕方がありません。

(評価:★5)

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