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[コメント] それでもボクはやってない(2007/日)

これを観ると、刑事事件で「最高裁まで争う人」の大半は罪状や量刑に不服な人なんだろうけど、一貫して「否認」で最高裁まで争い続ける人の中には紛れもなく冤罪の方もいらっしゃるのではないか、と思えてしまう。全ては一審に掛かっている、いや、事情聴取段階で決まってしまう。納得できないなら署名・捺印は絶対にするな。最後まで争え。僕は劇中、彼が最後に発した言葉に激しく共感した。レヴューは僕の体験談。
IN4MATION

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







僕の「それでもボクは不服だ」

僕は隣県への出張仕事帰りだった。早く帰りたい気分を堪えて法定速度を遵守して走行していた。IC付近など部分的に片側二車線区間は設けられているものの、殆どの区間は未だ片側一車線の対面通行だ。信じられないかもしれないが地方の高速道路では良くあることだ。

当然ながら、その一車線区間では後続車輌は先頭車輌の速度に追随するしかなく、急いでいる者・スピード狂の者等はストレスが溜まる。

中には、前を走行している車輌が法定速度を遵守しているにも関わらず、著しく車間距離を詰めて煽ったり、パッシング等の威嚇をしたりする者もいる。

みんななら、そんなとき、どうする?

怖いな、と思いつつも自分の中の正義を貫き法定速度で走り続ける?

煽られるままに自分も速度をあげちゃう?

「痴漢行為」には大した意味はなく、この作品は警察の杜撰な取調べ情況や司法に関わる者の人間性を如実に示すことが目的だったことは間違いない。題材として痴漢を選んだのは、最も身近で起こり得る可能性が高い、ある意味で万人ウケ(受け入れという意味のウケ)する犯罪だっただけだろう。

先の話題に戻ろう。

前述したが、これは僕が実際に直面したケースだ。

その日、僕は自分の仕事内容に満足してのご帰還だった。

だが、偶然が偶然を呼び、結果最悪の日の始まりになってしまった。

まず、高速に乗った。走り出してしばらくすると後ろから来た夜行高速バスが僕を猛追してくる。気にせず法定速度で走っているとなおも車間を詰めてくる。長いトンネルを抜け、二車線区間に入ったところで先ほどのバスを先頭に数台の車が僕を追い越していった。

「急ぐ奴は勝手に急げば〜」

少し走ればまた一車線だ。僕はその車らを全て前に行かせてから最後尾についた。 みるみる視界から消えていく車列。前にも後ろにも車がいない。気が楽だ。

次のトンネルが近づいてきた頃、いつの間にかトラックがハイビームで僕をパッシングしてくる。

「トンネル過ぎたらすぐ二車線だっつーのにせっかちな奴!」と思いながら、僕は少しだけアクセルを踏んだ。法定速度70kmのところを80km程度まで加速した。

なぜなら、すぐに二車線区間がやってくることがわかっていたからだ。

一定時間継続して速度を超過して初めて道交法がいう「速度超過違反」に該当する。

その一定時間内であれば、危機回避行動と判断される筈だからだ。僕はそこまで冷静に対処できた。いわゆる、酒気帯びでもなければ、恐怖でもない、ましてや怒りなどでもなく、冷静に「煽ってくる後続車輌に危機を感じて」意識的に速度超過をしたのだ。

当然二車線区間になった瞬間に法定速度に戻した。この間約5分。

今日はついてない。何となく嫌な予感がし出していた。

次のトンネル付近でルームミラーを覗くと遥か後方にヘッドライトが見えた。 時折ルームミラーで確認する限り、車間距離は先程と余り変わらないようだ。 そして、長い長いトンネルに入った。もちろん片側一車線だ。

トンネルに入った途端に後続車輌は僕の車との車間を詰めてきた。

「何だ、こいつ? 意味わかんねっ!」 さっきまであんなに安穏と走っていた車が、片側一車線のトンネルに入った瞬間から車間を詰めてきたんだから。

少し車間を空けようと意識的にアクセルを踏んだ。車間は離れた。しばらくするとまたその車は僕の後方にいる。ルームミラーから運転席の隣の助手席に誰かが乗っている。相手の車は、2人が乗車している事を確認できる距離まで車間を詰めてきたわけだ。

「結構ムカつくっつーの!」 長いトンネルの中、そうした車間を詰められては空け、詰められては空けを3回繰り返した。

最後に車間を詰められた時に、「もうすぐトンネルが終わる。二車線区間で先に行かせよう」と思った僕は、もう一度アクセルを踏んだ。約3〜5分程度。

二車線区間に入ったところで、後続車輌は天井に赤色灯を回転させ、パッシングし、僕に車を左脇の路肩に寄せて停車するように求めてきた。

覆面パトカーだったんだ。

免許証の提示を求められ応じた。

制限速度の認知を尋ねられたので、時速70kmだと承知している旨を伝えた。

「危険なので、後方の車輌に同乗するように」求められた。応じた。

速度計測器がはじき出したレシートのようなものに記載されている速度は時速84km。僕が出していた速度らしい。

速度超過現認ということで、僕は説明もなく署名・捺印させられそうになった。

再々の煽り行為、速度超過時間、等を説明すると1人の警官が突然「一喝」してきた。

「出してるもんは出してんだよ」

「署名・捺印しないと車から降ろさないよ」

「こっちは2人、そっちは1人。こっちには証人がいるんだからな」

なだめ役だろうか。運転していた警官が言う。

「まぁ、今日は10日だからね、下道も厳しくやってんのよ、堪えて署名してよ」

押し問答が30分は続いた。根負けした僕は「速度を一時的に超過した事実」を認めて署名・捺印し、ようやく解放された。ムカつく! ムカつく! 何か変だ! でも、キレちゃいけない。ココでキレたら相手の思う壺。公務執行妨害を盾に逮捕されちゃうからね。

警察車輌から降りる際に、先程暴言を吐いた警官の所属と名前を確認した。

「●●署の○○だ。文句があるならいつでも相手になってやる」

彼は言った。

ヤッパリコイツ、ムカツクンデスケド!

桃色の違反切符を切られた僕は、納得がいかない。

速度超過は認めたものの、その取締法に憤りを感じた。

切符を繁々と眺めていると、不服がある場合は反則金を支払わずともよいがその場合は刑事事件となり裁判に処される旨の明記があった。その日は時間が遅かったのでそのまま法定速度で帰宅し、翌日から僕の闘いは始まった。

全て書くと長い。

警察署に一度、検察庁に二度、呼び出しを食らった。意図的に反則金を支払わなかった旨や、速度超過の事実云々よりも取締方法を争いたい旨、暴言を吐いた警官に謝罪を求めたい旨を伝え続けた。同じことを何度も何度もだ。

速度超過を争えば、その速度測定機器メーカーが証人として現れ自社製品が如何に高性能かをセールストークさながら立証し出すだろう。しかも、僕は速度超過を認める旨の書類に既に署名捺印している。争点はソコじゃない。しかし、何とかソコに争点をずらそうとする警察側。

アナタタチ、ニホンゴ、ワカリマスカ?

警察でも、検察でも、起訴すると間違いなく費用はかかるし期間もかかる、有罪となれば君は前科者になる、過去に道交法違反をした僕の経歴も調べ上げられ、「人間的にも信用ないよ」と言われた。

何度も諦めるように諭されたが、今回に関しては無実は無実だ。逆に言った。

「納得できる時には、今まで同様に即座に署名捺印し、反省し、反則金を翌銀行営業日に払い込んでいます。今回は納得できないから支払わないんです。構いません、裁判にしてください。」

僕は言い続けた。

結果、僕は不起訴を勝ち取った。

でもね、不起訴になった事実すら向こうから連絡があったわけではなく、いつ頃に起訴か不起訴かが明確になるのか、こちらから問い合わせて、初めて不起訴になった事実を知らされたんだ。

反則金の支払義務は免れたが減点された点数はそのままだ。

行政裁判として別途争わなくてはならないらしい。

法律用語を駆使した怯まない反論から僕の本気が伝わったのか、裏で糸引く有能な弁護人の存在を検察が想像したのか、こんな些細なことで時間を割くよりも他のヤツを検挙して点数を稼いだ方が効率がいいと警察側が考えたのか真意の程はわからない。

ただ、一つ言える事は、「法律は習っていなくとも周知の事実である」という点。

法学部という大学の専門課程でしか学問として取り扱っていないにもかかわらず、だ。

んなら、義務教育項目に加えろっつーの!

一家に一冊六法全書がある家庭はどんだけだ?

法学を履修していない人間の中で、一般常識として被告と被告人と被疑者の違いを明確に述べられるのは何人だ?

弾劾裁判で裁判官を罷免できる要件を詳細に述べられる者はどのくらいいる?

警察に違反切符を切られて不服に思いながらも泣き寝入りした人が何人いるんだろう。

その警察や検察と戦う術を誰かに習った覚えは、ない。

どんな国だよ? 法治国家? 笑わせる!

「疑わしきは被告の利益に」――そんな法廷原則すらも守られていないこの国が!

司法制度の腐敗以前の問題だ。

国がおかしい。

モンテスキューがかつて説いた三権分立は間違えている。

司法の公平性を客観的に判断する機関が必要だ。四権分立にしないと駄目なんだよ。

こんなところで立法論をまくし立てても意味がないことはわかってる。

周坊監督も、この映画で何かが変わることを期待はしていないだろう。

多分、現実を知ってもらいたい、ただそれだけのメッセージはこの作品から強く強く届いたはずだ。

僕は声を大にして言いたい。

損得の問題じゃない。

自分の人生全てを賭けてでも、自分の尊厳を守るために、本当に罪なき時は争え! 

屈するな!! 

戦え!!!

ここで諦めるくらいなら、小さなプライドなんか最初から持つな。

「控訴します」

彼の発言に激しく同意。

当たり前だよ。

(評価:★5)

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