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[コメント] 深呼吸の必要(2004/日)

おばあ(吉田妙子)の話し方や気遣いに含まれる優しさだけじゃなくって、冒頭のプールのカルキ臭やキビのざわめき、島の風の匂いとか油味噌入りのおにぎりの味までも伝わってくる、いい映画。変に恋愛絡ませたりしない設定。こういうの、好き。特にこういうところが好き。
IN4MATION

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







誰一人として不必要な配役はいなくって、それぞれの個が立ってる映画って好き。

ひなみはごくごく普通の派遣社員の女の子。一見、何の悩みもないようでいて、もっとも女の子の観客が感情移入しやすいタイプ。だんだん日に灼けて褐色になっていく彼女を観ていると、僕も何だか元気になってきた。

池永さん谷原章介ならではの役。こういう役やらせるとハマルね。何かあるって思ってたけど、やっぱりね。「僕も半分出すよ」マイセン注文して金額が半端になると「僕が出すよ」って、分かる分かる。そうなるよね。大人だよね。

西村は下の名前が大輔。うっわぁ、ありがちな設定。。。でも成宮寛貴が演じると、これもハマリ役。拗ねたような上目遣いから一転、後半の熱血振りはリャンメン待ちができる成宮君ならではの芝居かと。田所に対して言いたい事ズケズケ言っちゃう辺り、かなり僕とはウマが合いそうだ。ずっと思ってたもん、おんなじ事。ちなみに血液型はB型。

川野悦子は調子いい女。最初は口ばっかしの嫌な女。後半はムードメーカー。こういう子は必要。花火のシーンで西村にそっと花火手渡すシーン辺りから、可愛くなってきた。

辻元美鈴はキビ刈りの腕では田所以上おじい並み。彼女の登場で何となく物語が動き出した感じ。

加奈子は前半暗めな女の子。完全におばあからは孫のような扱いを受けてて、またそれが似合ってる。ジャージにあの日除け帽。いいね、いいよ。

田所はかなりの曲者。彼を演じる大森南朋、『ブァイブレータ』で見せた強烈な個性は今回も活かされてる。この人の人生経験はどこまでが演技でどこからが実体験なのかホントにわからないくらい芝居が上手い。

今回の役どころはバイト先ならどこにでもいそうなタイプ。自分が「必要とされている」と自分で言うあたりが最悪。嬉しいくせに「勘弁してほしいよ、ホント」なんて言っちゃう始末。でも、素直に「ありがとう」って西村に言えたり、グローブを用意したりと、ただの嫌な先輩面した奴で終わらせないあたりがこの映画のいいところであり大森の凄いところ。

おじいは三線弾いて、いつも笑って、「なんくるないさ〜」「いちゃりばちょうでぇ」って 言っててくれればそれでいい。

おばあは僕のおばあにそっくりで、話し方も同じで、「あれは僕のおばあだ」と錯覚しちゃう。キビ刈り隊が到着した日の晩。テーブルに並んだ郷土料理を振舞うシーンのおばあの台詞、あれ100%おばあのアドリブだね。だってうちのおばあと同じ事言ってるもん。

時折見せられる俯瞰のキビ畑。少しずつ少しずつ地面が見えてくる画とか。

夕日に染まる入り江で思い思いに過ごすみんな、とか。

初日のぎこちない雰囲気から徐々にみんなが近づいていく距離を名前の呼び方で表現する手法とか。そう、例えば、田所を「おっさん」呼ばわりしてても、最初の「おっさん」と後半の「おっさ〜ん」は意味合いが違うよね。

なんかそういうところ、ひっくるめて全部好き。

後日談が余り語られないあたりも過不足ない感じで、ホント「いい感じ」だ。

働いて、飯食って、寝て、朝がきて、深呼吸して、新しい一日の始まり。

何があっても、それだけは変わらないことをさりげなく再認識させられる映画だね。

(評価:★5)

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