[コメント] 海底軍艦(1963/日)
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神宮寺大佐(田崎潤)の存在や言動、拘留された轟天建武隊員が尋問に認識番号しか答えないといったディテール。そういったものが、あるいは終戦を拒否した部隊が南洋のどこかに……といった物語の演出を盛り上げる。
楠見元少将(上原謙)の信念を伴った変節が、神宮寺大佐と正面からぶつかる。しかし双方妥協もしなければ、へつらいもしない。
そこがこの映画の眼目であり、緊張感のはずだ。
しかし……肝心の轟天号があれでは、そういった迫真の盛り上がりも一気にヒートダウンしてしまう。空を飛んでビームを発射するトンデモ兵器と、シリアスなお膳立てはイキツモドリツ。結局どこへもたどり着けない。
たしかに、まさか空を飛ぶとは! とビックリはした。そういう意味のプリミティブな力強さがあることは間違い無い。そういった冒険小説のキテレツさで力押しにしてくれていたら、『地球防衛軍』や『宇宙大戦争』のような痛快娯楽SFになれたのではないだろうか。この2作では、どんな超兵器が出てきても、どんなSF的ハチャメチャがあったとしても、それがネガティブ要素になっているとは思えないからだ。
しかし、本作では田崎潤が存在感を大きくすればするほど、轟天号のトンデモさが気になってしかたなくなってしまう。そのへんがもったいない。そしてもちろん神宮寺大佐にしても、彼がもっと活躍できるような舞台もプロットもあるはず……と思えば余計にもったいない!
ただし、轟天号の存在感は、ど真ん中に投げ込まれた豪速球。痛烈に突き刺さったからこそ、『ヤマト』や空想戦記物の「○○艦隊」に大きな影響を与えたのだろう(とりみきなど前述の西武沿線系クリエイターもしかり)。この映画に対する印象は、やはり世代的な差が出てしまうのかもしれない。子供の頃に見ていたら、やはりワクワクがドキドキになって止まらなかった! と思う。
蛇足
上原謙を初めて見たような気がする(ワイドショー意外で)。やっぱり息子よりイイ男だけれど、息子に輪をかけて大根だったんだなあ。
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