コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ミスティック・リバー(2003/米)

ショーン・ペンに仮託して行われる、イーストウッドの王様ごっこ。「余を敬うのジャー!!」
Kavalier

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







2流のミステリーを、ものすごい映像と役者の重厚な演技で押し切る2時間半。 私は原作は未読なのだが、デニス・ルへインならこれ以上のミステリーをもっと書いているよ。イーストウッドがこれに飛びついたのは、非法治での権力・刑の執行というサブ・テーマに惹かれたからだろう。

ミステリーの不備を細かく指摘してもしかたないのだが、少しだけ。

○冒頭の誘拐劇が、登場人物達にトラウマを与えるためにしか機能していない。

○ティム・ロビンスの不自然な行動が、単にミスディレクションを起させる為にしか使用なされていない。

○その彼の行動とラストの唐突な死体発見のくだりだの、変なタイミングであきらかにされる通報テープの真実だのは、ラストをアイロニーのドラマで帰結させるためだけに使用なされている作為に思える。

結局は、ラストのアイロニカルなシチュエーションを成立させるためだけに、逆算されて用意された不自然なシーン、プロットが多すぎる。非常に底が浅いミステリーだ。

どうでもいい話ながら、ラストの、家族とコミュニティを守るためには私人は法を無視しても私刑を下すことができる、ってくだりが、意図的に、今の世界情勢に対して裏読みできるように作られてある。それは、イラクについて言及したり星条旗のカットを挿入していることであきらかなんだけど、イーストウッドはマジでそういうつもりでやっているのか、映画を格調高くみせるためのハッタリなのかどっちなのだろうか。

私は、ハッタリ説に一票。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (12 人)おーい粗茶[*] ヒエロ[*] ちわわ 鵜 白 舞[*] TOBBY[*] 草月 アルシュ[*] すやすや[*] 死ぬまでシネマ[*] tredair トシ けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。