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[コメント] 東京裁判(1983/日)

冷戦下のリベラル。2006年から見ると相対的に「右」寄り。映画としては存在意義はもはやなくて、歴史遺物以外何物でもないかと。
Kavalier

作り手側はリベラルな見地に立って製作した映画と推測される。ただ「復讐裁判」「事後法・共謀罪への批判」「被告人選定の不自然さ」「裁判下に行われていた連合国の軍事政策の非難」等々を強調する作りになっているので、現段階(2006年)から見れば、相対的に「右」寄りの主張におもねっているように見えてしまう。南京事件への言及を除けば例えば『プライド・運命の瞬間〈とき〉』へ好意的な観客にも満足できる内容になっているんじゃないかな。

東京裁判に関しては、近年になってもアメリカ側からの新資料が明らかになるなど、いまだ全容が明らかになっていないことや、裁判の歴史的な位置づけのコンセンサスが不明瞭なこともあって、この映画自体が、東京裁判を巡る一次資料と化してしまっている部分もあるんじゃないかと思う。例えば、作中では「共謀罪」を「共犯罪」と位置づけたり、法廷の被告人席の席数によって被告人の数が選定された、と単純な間違いがいくつか存在していて、当時の東京裁判への歴史認識として見るとなかなか興味深い。

映画が製作された冷戦下の思想的影響が強いこともあって映画としての存在意義はもはや歴史的遺物でしょう。

ただ、武満徹の音楽は素晴らしいね。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)寒山拾得[*]

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