[コメント] カメラを止めるな!(2017/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
確かに、これは三谷幸喜かもしれない。監督ご本人も、強く影響を受けたとの談。
映画「ラジオの時間」と舞台「幕を降ろすな」を足して2で割ったと、思えば思えなくもない。だが、映画としては三谷幸喜より100倍面白い。
この三重四重の構造的シチュエーションコメディーはありそうでなかったし、冒頭37分のノンストップ映画内映画の疾走感はチープさを打ち消しながら、それはそれ単体で面白いのだが、観客にちょっとした違和感と、「これなんなの?本当に面白いの?あれ?これで終わり?」という一種の不安感を芽生えさせ、そう、2度目の映画がそこから始まる!!
みんなでものを創る。
何でもいい。合唱コンクール。文化祭の演劇。体育祭の創作ダンス。自治会のお祭りでやぐらを組み立てる。母校の応援団。会社での新しいプロジェクト。
ワイワイやりながら、ああだのこうだの、人間だから、組織だから、衝突もする。 それが例え、しがらみと妥協の産物でもいい。完成したものをみんなで見ると、「やって良かった」と思いを噛みしめる。
この誰もが共感する胸熱シチュエーションをB級ゾンビ映画の撮影現場に据え、何かとうるさいシネフィル連中の心に刺さるフックをさりげなく散りばめつつ、ワンカット撮影という縛りが生み出すアクロバットなカメラの運動と、練りつくされた伏線回収の連打で、口をあんぐりさせたり、大声で笑わせたり、泣かせたりする。
満員のシネコンが笑いで沸く中、僕は、買ったポップコーンのほとんどを口にすることなく、この映画に出会えた興奮を夢のように感じていた。
20年以上も昔、同じように映画の夢を追いかけていた自分の、恥ずかしさと、誇らしさの中間のような感情を思い出していた。
「絶対にカメラを止めるな」と監督役の役者さんが思い切りカメラ目線で言った時の、あの構造が歪む瞬間。狂気と笑いと泣かせが混じった瞬間の奇跡は思い出すだけでもぶるっと来る。
そして多重構造のこの映画の「四重目」であるエンドロールで流れるメイキングは、37分間の「ONE CUT OF THE DEAD」がどれだけ死に物狂いで撮られていたかを克明に記録しており、息を吞むしかない。
これはつまり、ジャッキー・チェンのNG集に通じる、映画賛歌の結晶である。
泣くなという方が無理である。
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