映画館で観てよかったと思う。このビッグウェーブに乗れて、時代の目撃者になれて超おもしろかった。

予告編を目にしたときにはもうとても見ていられないと思っていたけれど、あるところで、勝利条件の非常に厳しいこの映画製作に挑戦する作り手の想いみたいなものを耳にして、また、原作を離れた1本の映画としてのおもしろみを期待できそうな、敢えての改変があると知り、ならば観てみようと多少なりの期待をして映画館でこの映画を観ることにした。

まさか、脚本にいちばんがっかりさせられるとは……

もう「バカがバカなことをして窮地に陥る展開」なんて要らないのよ。そんなことしなくても、いつどこで巨人に襲われるかわからない、十分に切迫した状況でしょうに。そういう展開に対する好き嫌いを置いても、クッソ古いよ。『イントゥ・ザ・ストーム』とか観てないのかな。あと女性キャラクターが概ねバカにしか見えなくて酷い……。『マッドマックス　怒りのデス・ロード』とか観てないのかな。

なにより、デキる上司に彼女をNTRれた新入社員の苦悩とかこの映画で誰が観たいねん！ていうね……。映画独自のプロットとキャラクターを踏まえて、主人公をより過酷な状況に突き落とす意図らしいけど、絶叫するエレンに同情するどころか「お前のNTRショックとか知ったことか！」としか思えない。

NTR発覚、からのシングルマザーに迫られ、迫ってきたシングルマザーだけが巨人に食われる、この一連の展開には心底ウンザリした。脚本も演出も芝居も汚らしくて気持ち悪くて、劇場を出ていきたいと思うほど。「セックスしてるカップルはモンスターに襲われる」お約束とか、マジでどうでもいいわ……

――マジメに観に行ったのがよくなかったんだ！ウヒヒスタンスならあげつらった欠点は全て楽しめた。北村龍平監督の『ゴジラ FINAL WARS』を観る気持ちで観ればよかったんだ。國村隼も出てるし……

映画を観てから数日後、ツイッターでブツブツとこの映画の文句をつぶやき、また、酷評の嵐が荒れ狂い関係者が炎上すらする様を見たのちに、そうした悟りの境地に至ったとき、この映画を劇場で観たことは、ひとつの貴重な映画体験に昇華した。わたしは、乗るしかないこのビッグウェーブに、まちがいなく乗ることができたのだと思えた。はー、後編も観に行こ。

そう、ウヒヒはやさしい……マジメに見ればダサくて恥ずかしくてカッコ悪い映画が、キャラクターが、ウヒヒの眼鏡を通せば永遠に語り継がれる“底抜け超大作”として、“シキシマパイセン”として映画史に燦然と爆誕するんだ……こんなにやさしく心温まる話があるか……なあ……おい…………ハッピーバースデー……デビルマン……！