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[コメント] 日本のいちばん長い日(1967/日)

一般の兵士・市民にとっては「いちばん長い日」でも何でもなかった。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







タイトルのみで内容を詳しく知らなかった時点では、「日本の〜」と言うからには、天皇、政府・軍部から一般の兵士、銃後の国民まで、すべての日本人にとっての昭和20年8月15日を描いた作品なのかと勝手に解釈していた。

鑑賞前にプロットをチェックしてみると、国の指導層に属する人々のみが描かれている映画のようだとわかり、少々イメージが違ったな、と。

実際映画を観てみて「そりゃそうだ」と反省。一般の兵士・市民は、その日が終戦の日になるなんて知ってるわけないのだった。恐怖と辛苦に満ちた生活が続く中での、真夏のある一日に突然玉音放送が飛び込んできただけだったんだ。(実際、玉音放送を聴いても何のことやらよく理解できなかったという話もよく聞く。)彼らにとっては「いちばん長い日」でも何でもなかった。

特攻機で飛び立つ少年兵の姿と玉音放送の録音シーンが切り返しで映し出される場面や、玉音放送を聞くために兵士が集合したことを伊藤雄之助演じる上官に報告する下士官の「陛下からの激励のお言葉があると信じている兵士もいるようであります」といったような台詞には、途方も無い虚しさを感じざるを得ない。

かといって、この作品に描かれる、事務的に終戦の手続きを進める指導層・官僚たちや、クーデター未遂を起こす若手将校たちの姿に、嫌悪感を抱くかというとそういうわけでもなかった。前半部では、その無責任にすら見える態度や視野の狭さに怒りを覚えていたが、観ていくうちに、考え方は大きく違えどみんな真剣に国のことを考えていた点では同じなのだ、という印象に至った。そして、そのことにまた虚しさを感じる。

58回目の終戦記念日である今日、この映画を観てみても、結局のところ虚しさ以外の感情は生まれてこなかった。が、それは日本人として心に留めておくべき虚しさであるのだと思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)irodori けにろん[*] 動物園のクマ[*] Myurakz[*] おーい粗茶[*] カレルレン 荒馬大介[*]

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