[コメント] ファーザー(2020/英=仏)
ファーストシーンを眺めていて、なんと凡庸な演出の映画なのだろうと思ってしまったのだが…それも束の間、不条理が急展開していく世界に目が離せなくなる。まるで『マルホランド・ドライブ』。
腕時計、チキン、飾られた絵画、廊下の椅子、窓から見下ろす向かいの歩道、プロフィールが入れ替わっていく人物たち…数々のギミックに我々観客はどうしても謎解きをしたくなってしまうが、そういうものではない。アンソニーにとってはこれが眼前に繰り広げられる世界なのだ。主観を重ね合わせてこそ、この映画の醍醐味と恐ろしさを味わうことができる。
ラストは種明かしとしてみるとやや甲斐性が足りなく思えるが、果たしてあれが現実だと言い切れるのだろうか?人間の生の残酷な現実を発くジャーナリズムとエンターテイメントの高度な融合。
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