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[コメント] スタンド・バイ・ミー(1986/米)

胸躍る冒険譚でもなければ、感動の友情物語でもない。「少年時代」を美化していないからこそ、これだけ多くの人に愛される作品となりえたのではないだろうか。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







少年たちは、ただひたすら線路の上を歩く。目的の”死体”を見つけ、年上の不良どもを追っ払いはしたものの、それが期待したような極上の成功体験になったわけでもない。またひたすらトボトボと歩いて町へ帰り、別々に帰路に就く。そしていつの間にか疎遠になり、会うこともなくなる。

ただそれだけのことだ。ノスタルジーというフィルターを外して改めて眺めてみれば、「少年時代」というものを実に突き放したスタンスで描いていることに気づく。

誰しも、少年の頃”生きること”は苦しいものだったはず。中途半端に世間を知るが、知らないことも山ほどある。理解されなかったり、理不尽に直面しても、それに対抗するだけの社会的な力を持たない。そして歳を重ねるにつれ、かつて思い悩んでいたことが実は”取るに足らないこと”であることを悟る。”成長する”とはそういうこと。

この映画が喚起する”懐かしさ”とは、そうした少年時代の”息苦しさ”を思い出させるところから生まれているのではないだろうか。

クズ鉄置場に忍び込んだ少年たちが犬に追われ、金網越しにクズ鉄置場の管理人と対峙する場面が印象的だ。管理人に父親のことを侮辱されコリー・フェルドマンがキレる。あの場面は切ない。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)けにろん[*] さなぎ[*] terracotta

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