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[コメント] 山の音(1954/日)

小津の『東京物語』と表裏一体と見ると興味深い。
緑雨

いずれの作品においても原節子は激情を内に秘めながら健気な嫁を演じる。一方、血の繋がらない親族たちは、その関係性において人間の業の深さを露わにする。『東京物語』では建前の裏から垣間見える本音を痛切に、そしてこの『山の音』では醜い本能を隠しもせずに赤裸々に。

それにしてもここに描かれる男どもの覚悟の無さ加減といったら。上原謙のクズっぷりは言わずもがな、山村總にしても、表面的には理解ある優しき舅を演じている分、なおのこと始末が悪い。通勤電車の中での上原からの「お父さんだって火遊びくらいしたことあるんでしょう?」との問いにまともに答えず話をはぐらかす情けなさ。この父にしてこの子あり。

秘書役杉葉子の厭世的な立ち居振る舞いが印象深い。能面被って、上・下を向かされる姿の面妖さ。

(評価:★3)

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