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[コメント] パリ20区、僕たちのクラス(2008/仏)

建前で「先生と生徒」を演じているのではなくって、教師も生徒も生身の人間で、そんな彼ら彼女らが衝突するガチンコな生々しさが実に面白い。
緑雨

フランスの教師は案外権威的で、帽子を取れフードを被るな座っていいと言われるまで座るなと、何かと口うるさい。そういう擬制としての権威を維持することでギリギリの秩序が保たれる。生徒たちも秩序を保つことのメリットを共通理解として持っているからこそ、不承不承指示に従う。

成績会議には生徒代表が出席し、ルールを破った生徒は懲罰委員会にかけられる。懲罰委員会には外部委員も出席し、担任教師が侮辱的な言葉を使ってしまったことをきちんと報告書に書けと校長は指示する。ここでは学校は完全に「制度」だ。こういうところでは学校ぐるみでのいじめ隠蔽なんて起こらないに違いない。

で、生身の教師たちは職員室で互いの苦労を慰め合う。妙齢の女教師は「私、赤ちゃんができたの」なんて言って、みんなで乾杯したりする。このへんの楽屋落ちも妙味を生む。

全編校内のシーンで構成されるが、思い返すとオープニングシーンは校外のカフェだった。主演の担任教師の後頭部アップショットから始まり、カフェを出た彼は学校へと入っていく。学校という「制度」の外と内の、疎な関係を象徴しているようで印象深い。

(評価:★3)

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