コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 戦争と平和(1968/露)

19世紀文学最高峰「戦争と平和」の物語もセリフもそのままの、忠実な映画化だ。とにかく大部な原作で、どこを捨てるのかを苦慮したと思われる。結果完成した映画はトルストイの歴史観・考察を除けても(これが又長い)、全体の4割。つまり6割を捨てたように見える。
KEI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画の持つ特色―映像、音楽を見事に生かしている。アウステルリッツの戦い、大舞踏会、ボロジノ戦、モスクワ退去・炎上という見せ場は、現実を再現したようで、圧巻だ。

そして音楽。原作では、ただ数語の歌詞のみの歌を、一曲丸々作っている。これが数曲あるのだ。やはり見て、耳で聞こえると、印象深さが違う。(仮小屋のシーン他)。

6割カットしたのは、当然時間的制約もあろうが、別の意味―例えば格調高くする為だったのではないか?それは、人間の低い品性(妬み、恨み、不道徳etc)とか、惚れた腫れたの恋愛描写は極力カットしているからだ。さすがにナターシャの不倫事件は入れざるを得なかったが、そういう人間らしいものは、原作ではたっぷりあるのだ。そもそも、原作のオープニングは、破廉恥なワシーリー公爵家(娘がピエールの妻になるエレン)の紹介から始まる。そういう描写をカットしたorせざるを得なかった(?)のは、残念なことだ。

トルストイは元々はデカブリストの乱(1925年:皇帝の専制政治に反対した)を書くつもりだったらしい。そして、党員たちを調べて行くと、ナポレオン戦争(1812年)に遡った。つまり、戦に従軍した人々が欧州の自由文明に触れ、十数年後に乱を起こしたという事が分かったのだ。しかし興味は段々と、ナポレオン戦争とその時代に移って行き、結果、1805〜1814年の物語(映画も同じ)となった。

この将来党員になる人々のイメージとして、ピエールを登場させているのだ。映画のテーマ「悪に対する善の団結」はピエールのセリフそのままだ。

原作では多くの登場人物(559人―ちなみに映画では 595、193人[資料による])がおり、各々が自分の人生の片鱗をしっかり見せてくれる。私は原作を読んでいて、ピエールが主人公という気がしなかった。主人公が一杯いる物語という感じだった。

映画はその中でピエールだけに焦点を当てて、話を進めている。

また原作ではトルストイ史観、戦争他諸々の事象に対する考察(これがまた長いし、私自身よく理解できないものもあった)があり、重厚さを持っている。原作とは比ぶべくもないが、映画は原作の入門編とはいえる。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)ぽんしゅう[*] 寒山

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。