[コメント] 雨あがる(1999/日)
正直過ぎて古拙な趣きすら感じさせる台詞と、伏線など張ることも考えないきわめて単純明快なストーリー。そんな黒澤の脚本を、いかにもこうしか撮りようはないとばかりに黒澤調に撮った不器用さがむしろ好ましい。
後からじわじわと効いてくる映画だ。最初はそのあまりの直球勝負に2点をつけてしまったのだが、寝床の中で懐かしい映画でも思い出すように物語を噛み締め、改めてこの評を書いている。
特にエネルギーを感じられたのが、川の荒れが治まるまでの貧乏人どもの宴の有り様。二十世紀終わりの年に撮られたとは思えぬ懐かしい古臭さだ。
だが、惜しむらくは、黒澤へのオマージュのつもりか、「あの」血液シャワーを出されたのはいささか鼻白んだことであった。この物語は「椿三十郎」とは全く違うのだ。寺尾聡が始終宮崎美子に頭が上がらない微笑ましさを楽しむべきであって、彼が鬼と化してしまう必要はない筈である。
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