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[コメント] 噂の女(1954/日)

あくまで正義の旗印の下に動く、理想の女久我美子を前に、苦界より脱出せんとするひたむきな願いを胸に男たちに翻弄される母・田中絹代。時代を代表する対照的な二人の女優が、荒波に懸命に抗う姿にこの時代の女の生き様を見る。華族令嬢のお嬢様と、生涯底辺に生きつづけた女のがっぷり四つ。この図式は面白い。
水那岐

そして、いかにもこの時代らしい狡猾な若造、大谷友右衛門のぬめぬめとした両生類フェイスも共通の女達の敵として引けをとらない。進藤英太郎の判りやすいアヴァンゲールの操縦のしやすさに較べれば、煮ても焼いても食えない大谷の、ミセス・ロビンソンを骨ごと平らげてキャサリン・ロスを奪い逃げようとする男としての在り様はこの時代ならではの敵役だ。

しかし、久我の若女将としての堂に入った演技は、やはり人を使うに長けた側の女であることを痛感させられる。これは彼女の強さだ。

(評価:★4)

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