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[コメント] RE:cycle of the PENGUINDRUM 劇場版 輪るピングドラム [前編] 君の列車は生存戦略(2022/日)

思えば、なんと温かく儚い妄想のつづれ織りだったのだろうか。妙に明るいスラップスティック場面が頻繁に挟まれていたTV版の謎は、今にして思えば、もし一度に提示してしまったならその重さに打ちひしがれてしまうためだ。20世紀末期の日本を震撼させたあの事件に今なおまともに俺たちは立ち向かえない。フェイクでお茶を濁すしかないのだ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







でもこの作品においての奇妙な点は結構回避されてるんじゃないかしら。

誤解として、「生存戦略」のシーンはそんなに皆が思うほど多くなかったんじゃないか。言ってみれば『北斗の拳』でケンシロウが「おまえはもう死んでいる」と決め文句を言った数くらいでしょう。だってあのシーン、何十回もやるほど面白くないし。最後のほうでは「せいぞーん…やめた」なんて透かしのギャグをやるくらいのことですから。

ピクトグラムもそうそう特筆すべきことじゃない。『少女革命ウテナ』で、絵に描いたような少女漫画家さいとうちほにキャラデザをやらせたときから試みは始まっていたのじゃないか。上は生徒会の面々から、下はヒラ生徒までヘアスタイルを除いたすべてのキャラの顔は数パターンの変化しかもたない。そこに企みは存在していたのだ、というより少女漫画の知られざるカースト表現じゃないか。ほんのわずかの差異を得るべく粉骨砕身するキャラたちの努力は凄まじいものだが、やっぱりキャラはピクトグラムよろしく差異を振り分けてもらえないのだ。幾原監督の意地の悪い潔癖主義で。

そんなわけで、こういったことは俺は作風、とだけ言ってすまされるようなことと思えるのです。もっと注目すべき事件のカムフラージュに過ぎないことなので。

(評価:★5)

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